娘の高校の運動会に行ってきた。
天王寺高校は大阪でも「行事に力を入れる高校」として知られている。生徒は自分達のことを野人と言い、運動会は野人らしく派手に盛り上がる…と聞かされていた。
しかし運動会前日は生憎の雨。前日に「開始時間を遅らせて実施します」との連絡が入った。生徒は普段通りに登校して運動会の準備をするけれど、保護者は9時から入場受付とのこと。
地元の小中学校の運動会は歩いて行ける距離だったし、しかも生徒数が少なく「場所取り」なんてしなくても十分ゆったり観ることが出来る環境だったので「運動会の場所取り」なんて1度もしたことがなかった。
だけど今までとは勝手の違う運動会。しかも5月の運動会は初めての体験。暑さ対策もしなきゃいけないだろうし、少し早めに行って場所をの確保もしておいた方が良いのかも…と思い、受付開始の30分前に到着した。
受付30分前にまさかの大行列
「高校生の子どもの運動会に受付前に張り切って行く親ってどうなんだろ? 張り切り過ぎかな?」なんて思っていたのだけれど、到着した時にはすでに70~80人からなる行列が形成されていて、張り切り過ぎどころか完全に負け組だった。
受付開始時間の9時になり校庭に案内されたのだけど保護者席にはテントと椅子がセットされていた。だけど私が案内された時には既に最前線の椅子は埋まっていて「そりゃそうか…」とガッカリしていたのだけど3列席の1つだけ空いている席を発見。
運動会当日、夫は不幸にも腹痛で留守番することになっていて、私は1人の身軽さから「この席は空いていますか?」と聞いてみたところ、空いてたので首尾よく最前線の椅子席を確保することができた。
今年はたまたま1人だったから最前線椅子席が確保できたけれど、来年以降、夫婦で見に行くなら考えなきゃいけないな…と心に刻んだ。
陰キャ&文化系への配慮について
うちの娘はゴリゴリの体育会系で運動会で輝くタイプ。なので運動会に対して何の不安もなかったけれど、私自身は陰キャの文化系なので「天王寺高校…私だったら、このノリ…無理過ぎる…」と思っていた。
しかも天王寺高校の運動会はクラスで得点を競う形が行われる。得点を競う場合、陰キャ文化系人間は立つ瀬がないと言うかクラス内で辛い立場になる事が多い。
実際、私は中学校の運動会が大嫌いだった。高校は女子校で「クラスで団結して云々」みたいなノリが無かったので平和に過ごしていたものの、中学の頃は運動会が大嫌い過ぎて「運動会なんて無くなってしまえばいいんだ」と呪いの言葉を吐くような子どもだった。
なので「天王寺高校に入学した運動苦手な子はどうするんだろ?」とずっと気になっていたのだけれど、そこら辺の事への配慮はちゃんと用意されていたのには感心してしまった。
出場種目には「選手種目」と「一般種目」ってのがあって、選手種目だと勝ち負けでガバッと点差がつくけれど、一般種目は勝ったとてたいした点数がつかないシステムになっていた。なので運動が苦手な子は一般種目を選べば良いし、運動大好き民達は選手種目で輝いてください…って感じ。
さらに言うなら応援アーチ(応援の看板)などは美術系とか手先の器用な子が輝ける場になっているし、天王寺高校名物の3年男子陸上ボートなども「ゴリゴリの体育会系の生徒」だけでは絶対に勝てない仕様になっていて「運動出来ない子でも輝く場があるんだっ」て事を知り、なんだか安心してしまった。
チー牛と陰キャの集団が…
実は私。娘の入学式の時に日記には書かなかったけれど心配していた。「娘の同級生(と娘)はこの学校でちゃんとやっていけるのかな?」と
入学式で見た生徒達はお世辞にも「行事とかゴリゴリと楽しむ陽キャ集団」ではなかった。男子も女子も自信なさげで陰気な顔つきをしていて、女子達は「真面目っちゃあ真面目だけど垢抜けない田舎の子」って感じだったし、男子達は見るからに「チー牛」って感じだった。
チー牛とか陰キャって言葉は良い言葉でないのは分かっているけれど、私自身が「そちら側の人間」だった…って事もあるし、他に適切な表現が思いつかないので使わせてもらうけど「このチー牛と陰キャの集団が天王寺高校で馴染めるのかな?」と本気で心配していたのだ。
だけど天王寺高校に入学して2ヶ月弱でチー牛と陰キャの集団は予想以上に変化していた。
娘自身がそうなのだけど中学校時代は「目立たないように大人しくしている」って姿勢で過ごしていたけれど、天王寺高校に入学したからは積極的に学校生活を楽しんでいる。
1年生達の様子を見ていると2年生、3年生ほど思い切り弾けてはいないものの、しっかり行事を楽しんでいるようで競技にしても演技にしても全力で取り組んでいるのが見て取れた。
私が携わっている保育の世界では「環境」が人の成長に大きく関与するとされていて、環境についての配慮を大切にしている。
環境が変わると人は変わる。
わずか2ヶ月弱での子どもた達の変化に驚かされた。
1年男子の集団行動
運動会で私が1番、感心したのが1年生男子の演技種目の『集団行動』だった。
体育の集団行動と言うと日体大の集団行動が有名だけど、流石に公立高校の体育レベルの話なのでそんな大げさなものではない。「右向け右」や「左け左」「前へ進め」と言った簡単な指示に従って動くイメージ。後半はそれなりに難しい隊形になったりするものの、動作自体は簡単なものばかりだった。
とこが。「右向け右」で右を向くだけで生徒席の先輩達から「ウォォォー」って言う大歓声と共に大きな拍手が沸き起こるのだ。何をしても拍手喝采される。
娘が言うには演技をして戻ってきた1年生男子達も「何やっても拍手されたんだけど…」と嬉し恥ずかし…って感じだったらしい。
「右向け右」なんて普通に考えれば「高校生なんだから出来て当たり前」なのだけど、当たり前にできて当然の事であっても「褒められる」「認められる」って経験をするのが大事なのだと思う。
私は医療型児童発達支援センターで勤務しているので発達の遅れのある子ども達と日々関わっている。その中で例えば…絵本の読み聞かせで座った時は「ちゃんと座れて凄いね」と褒める。その子にとって「出来て当たり前」の事でも、とにかく褒める。「上手にスプーン持ってる」「かみかみ上手」「ゴックン出来たね」と、それはそれは褒め千切る。
この「褒める」って行為は甘やかしでも何でもなくて意図されたもの。
褒める事で自己肯定感が上がり、いつの間にか「苦手な事でも頑張ろう」となっていくし、不思議と出来なかったことが出来るようにもなっていく。
高校生ともなると他人から無条件に褒められたり称賛される事が無くなってくると思うのだけど、集団行動での「右向け右をしただけでも褒められた」と言う経験は1年生男子達にとって良い影響を与えると思う。そして自分達が先輩になった時、1年生に対して「ウォォォー」っと歓声をあげて応援するのだろう。
天王寺高校では運動会を通じて「良い継承」が行われていくのだろうなぁ…と胸熱だった。
行事が人を育てるシステム
娘達1年生は「中学生の頃を思えば生き生きしてるな」と思うものの、それでもまだまだ弾け切れていないし子どもっぽいところが多いのだけど、2年生、3年生と進むにつれて明らかにしっかりしてくる。
天王寺高校の3年生は男女とも本当に素晴らしい。競技や演技に対する姿勢、下の学年への応援、準備や片付け等どれを取って「凄いなぁ」と感心させられた。
まだまだ未熟な1年生達も今後、沢山の経験を積むことで先輩たちのような姿になっていくのだろうなぁ…と言う見通しを持つことができた。
正直なところ天王寺高校って入学時の偏差値にしては、大学実績がふるわない…ってところは否定できない。だけどこれから先の人生において大事な経験をさせてくれる学校なんだな…ってことを肌で感じた。
校風が合わない子(親)にはどうしようもない学校だと思うのだけど、娘には最適な高校だったと思う。そして私は「とりあえず高校生活を楽しんで欲しい。それ以外のことは…まぁ、追々考えように」って気持ちを再確認した。
学食に行ってみた
そして運動会と全く関係無い話だけど、せっかくの機会なので学食に行ってみた。
昼食はどんな感じなのか想像できなかったので、おにぎりを持参していたのだけど「これくらいなら食べられるかも」と思い、学食で売っているテイクアウトのコロッケを1個買ってみたところ、これが予想外に美味しかった。
運動会楽しい雰囲気に流されて美味しく感じたのかも知れないし、けっこうお腹が空いていたので美味しかったのかも知れないけれど1個100円のコロッケの美味しさに感激した。
娘に「学食のコロッケ美味しかったよ」と報告すると「学校で食べたら何でも美味しいんじゃないの?」と言われてしまった。娘も学食のコロッケが大好きとのこと。
学食には丼物や麺類などがあるので、次に学食に行くことがあれば是非とも食べてみたい。
良い運動会だった…
お腹の痛い夫を家で留守番させて1人で観に行った運動会。運動会なんて無くなってしまえばいいんだ」と呪いの言葉を吐いていた私でも素直に楽しむことの出来る良い運動会だった。
娘には高校生のうちに沢山楽しい経験をして人間として大きく成長して欲しい。少なくとも「若い時の楽しかった経験」は、今後の人生の励みになると信じている。
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