先日、夫に『12歳の文学賞』を受賞した鈴木るりかが書いた『さよなら、田中さん』がいかに素晴らしいかを力説していたら、夫から「白蓮さんからすると、作者の将来が頼もしい…って感じで期待してるの?」と質問されてしまった。
12歳で文学賞を受賞して、中学生の時点ですでに2冊も本を出版しているとなると「天才かよ!」と期待したいのは山々だけど「期待し過ぎてガッカリするのも嫌なんだよな…」という気持ちの方がずっと強い。
小説に限ったことではないけれど、どこの世界もプロとして活躍するのは難しい。
鳴り物入りでデビューしたとしても……例えば芥川賞を受賞したからと言っても一発屋として消えていく作家もいる。
作家のデビュー年齢とその後の活躍
これは個人的な考えに過ぎないのだけど、作家デビューの年齢とその子の活躍はあまり関係ないように思う。
デビューが早ければ作家として大成するかと思えばそうでもない。
若くしてデビューして活躍している作家さんだと、羽田圭介、朝井リョウあたりはデビューした後も頑張っているし、応援したいと思う。
その一方で30代以降でデビューした作家さんの豪華な面子を見ていると「デビューした年齢は関係ないな…」と思ってしまう。
作家のデビュー年齢
作家のデビュー年齢を表にしてみたので、ちょっとご覧戴きたい。
全年齢を網羅していないのは私の独断と偏見から適当にピックアップしてみたってことで。
全年齢を調べ上げて書くとなると、ちょっとシンドイ。
デビュー年齢 | 作家名 |
6歳 | 竹下龍之介 |
14歳 | 鈴木るりか |
15歳 | 三並夏 |
16歳 | 新井素子 |
17歳 | 綿矢りさ 乙一 羽田圭介 堀田あけみ |
18歳 | 島本理生 |
19歳 | 横溝正史 冲方丁 |
20歳 | 西尾維新 山田悠介 金井美恵子 朝井リョウ 金原ひとみ |
30歳 | 村上春樹 遠藤周作 宮本輝 辻仁成 遠藤周作 金城一紀 |
31歳 | 筒井康隆 星新一 小松左京 京極夏彦 有川浩 塩田武士 |
32歳 | 司馬遼太郎 塩野七生 姫野カオルコ |
40歳 | 浅田次郎 北村薫 大岡昇平 |
41歳 | 横山秀夫 荻原浩 小路幸也 |
42歳 | 松本清張 桐野夏生 畠中恵 磯崎憲一郎 桜木紫乃 |
44歳 | 窪美澄 海堂尊 |
50歳 | 百田尚樹 |
51歳 | 宗田理 |
74歳 | 黒田夏子 若竹千佐子 |
89歳 | 久木綾子 |
6歳の時に『天才えりちゃん金魚を食べた』でデビューした竹下龍之介は数冊絵本を出版したけれど、作家にはならず弁護士になっている。(それはそれで凄い!)
15歳で作家デビューした三並夏を覚えている人はいるだろうか? 2005年に文藝賞を受賞して、最後に出した単行本は2010年。今は何をしているか分からない。
作家ってデビューするのも大変なのに、生き残り続けるのはもっと大変。
消えていく作家が多過ぎる問題
『介護入門』で芥川賞を受賞したモブ・ノリオを覚えている人はいるだろうか?
モブ・ノリオはなかなかイカれた文章で芥川賞を獲ったのに、単行本が出たのは『介護入門』1冊きりだ。
数年前『踊り子と将棋指し』でデビューした坂上琴はデビュー作以降、仕事らしい仕事をしていない。
私は『踊り子と将棋指し』が気に入ったものだから「2作目も絶対に読む!」と楽しみにしていたけれど、坂上均のブログもツイッターも止まったままだ。
作家を諦めてしまったのか、そもそも元気で生きているのかさえ分からない。
消えてしまった作家は坂上均だけじゃない。
初めて読んで気にいった『笑う赤おに』を書いた雀野日名子は、『笑う赤おに』を最後に雀野日名子名義での作家活動を停止するとのこと。
消えてしまった作家を上げればキリがないし、大好きだったのにいなくなってまった人は1人や2人どころの話ではない。
本の世界から消えてしまった作家達…それぞれ事情があるのだと思う。
スランプで書けなくなってしまった人もいるだろうし、健康上の理由等から書けなくなった人もいると思う。
書けなくなった…のではなく、小説を書くよりも魅力的な事に出会ってしまって、作家以外の道を選んだ人もいると思う。
中学生で作家デビューした鈴木るりかが今後、どんな活躍をするのか検討もつかないけれど、個人的には応援したいし期待している。
だけど期待以上に「期待し過ぎないようにしよう」と言う自制心の方が強い。だって、これ以上がっかりしたくないのだもの。
ああ…坂上均はどこへ行ってしまったかのか? もう小説は書いてくれないのだろうか?
坂上均の現在の活動状況をご存知の方がいらしたら、ツイッターのDMか問い合わせフォームからこっそり教えてください。何のお礼も出来ませんが大喜びしますので是非ともよろしくお願いします。