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六月の雪 乃南アサ 文藝春秋

乃南アサと言うとミステリ作家のイメージが強い。

私も軽くハマっていた時期があり、何冊か読んだし気に入ってもいたけれど、ここ数年なんとなくご無沙汰していた。

図書館の新刊コーナーで見つけて「久しぶりに読んでみようかな」くらいの気持ちで手に取ったのだけど、この作品は今まで読んだ乃南アサの作品とは全く違っていて、良い意味で予想外だった。

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六月の雪

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祖母のふるさと、台南への旅が私の人生を変える 7日間のひとり旅が生んだ人々との絆がもたらした奇跡とは。

声優への夢破れ、祖母と二人で生活する杉山未来。入院した祖母を元気づけようと、未来は祖母が生まれた台湾の古都、台南を訪れることを決意する。

祖母の人生をたどる台湾の旅。そのなかで未来は、戦後に台湾の人々を襲った悲劇と植民地だった台湾に別れを告げた日本人の涙を知る。

そしてついにたどり着いた祖母の生家で、未来は人生が変わる奇跡のような体験をするのだった。

アマゾンより引用

感想

この本はミステリではない。なので「ミステリ作品が読みたい」と言う方にはオススメしない。純文学寄りのエンタメ小説と言うノリ。声優を目指して夢破れた女性が台湾を旅する物語。

ヒロインの祖母は女学生の頃まで台湾で暮らしていたと言う大正生まれの女性。

認知症が進行しつあり、生まれ育った台湾のことをヒロインに話して聞かせた事から、ヒロインは祖母のルーツたどる旅に出るのだけれど「旅行小説」と呼ぶには骨太過ぎる作品に仕上がっている。

作者の乃南アサは台湾との民間交流のための社団法人を知人と立ち上げ6年間で計40数回台湾を訪れて人々と交流、歴史や文化を深く知る旅を続けているとのこと。

台湾の歴史、台湾人の人となり、日本と台湾との関係が丁寧に描かれていて「台湾を知る本」として素晴らしいだけでなく、第二次世界大戦前後を生きた人達の人生を知ると言う意味でも興味深い作品に仕上がっている。

ミステリ作家が描いた作品なだけあって説教臭さが無く、ストレス無くグイグイ読ませてくれるところが素晴らしい。

ヒロインの身体を借りて、台湾を旅しているような気持ちになってしまった。台湾の歴史に驚いたり、台湾で出会った人達を好きになったり呆れたり。

この作品の素晴らしいところは「戦争」「台湾」「人の生き様」を上手くブレンドしていることだと思う。

最近読んだ小手鞠るいの作品『あんずの木の下で 身体の不自由な子どもたちの太平洋戦争』や『炎の来歴』も戦争がテーマになっていた。

しかしも小手鞠るいの場合「戦争」を全面に出し過ぎることで説教臭くなってしまったり、人の生き様が置き去りなってしまっていた。

それに対して、この作品はバランス感が優れていて絶妙なさじ加減が作品の精度をお仕上げている。

最初から最後まで面白く読ませてもらったし、様々なことを考えさせられた。そして「私も台湾について、もう少し知りたい」とさえ思ったしまった。

ミステリ作家の乃南アサがこんな骨太の作品を書くだなんて思ってもみなかった。乃南アサの作品からしばらく遠ざかっていたけれど、次回作以降、注目したい。

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白い木蓮の花の下で
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