図書館で娘の本を探していた時、ふと表紙に目が行ってしまったため手にとった。
一応、児童書のくくりに入る本だけど、子どもよりもむしろ大人に読んでもらいたい作品。
副題に「身体の不自由な子どもたちの太平洋戦争」とあるように、第二次世界大戦の時に障害のある子どもたちが学童疎開をした時の話が綴られている。
あんずの木の下で 身体の不自由な子どもたちの太平洋戦争
- 昭和7年、日本で初めて設立された手足の不自由な子どもたちのための「光明学校」の物語。
- 戦時下で戦力にならないから、障害があるからと言った理由で学童疎開の「対象外」にされた障害を持った生徒達と先生の物語。
- 小説の形をとっているけれど、ノンフィクション感がある。
感想
第二次世界大戦の時に障害を持った子どもたちが邪魔者扱いされていた…ってことは知ってたけれど、ここまで酷い扱いだったとは知らなかった。
東京の世田谷区光明養護学校の子どもたちが長野県に疎開する経緯や疎開後の生活が子どもにも分かる易しい言葉で綴られている。
しかし、正直「これ、ちゃんと読む子どもがどれくらいいるのかな?」と思ったのも事実だ。
テーマがテーマなだけに仕方がない部分もあるのだけれど、率直に言って真面目過ぎて面白くない。
ドキュメントと小説の線引があやふやなので、どう向き合ったら良いのかがよく分からない感じに仕上がってしまっている。
ドキュメントとして読むには私情が挟まり過ぎているし、小説として読むには思い入れ出来るほどしっかり描写された人物がないのだ。
おそらく「子どもが読める本にしたい」というところが足枷になってしまったのだと思う。
いっそ「事実に基づいて小説を書きました」ってことで、子どもを主人公にするか、そうでなければ学術書として淡々と書いた方が良かったように思う。
残念ながら子どもの読み物としては相当イマイチ。
ただ大人が読むとなると話は変わってくる。
元々子ども向けに書かれているためサクサク読める。戦争をテーマにした本はどうしても読むのがしんどくなるけれど、ストレスなく楽に読めるのが良いと思う。
この作品は子どもに向けて書かれているけれど、むしろ大人が読む方が良いと思う。特に教育関係者は読んでおいてもいいんじゃないかな。
間違いなく良書だと思うのだけど娘に「読んでみたら?」とすすめる気にはなれない。「面白い・面白くない」で分けるとするなら完全に面白くない部類に入ってしまうのだ。
良い本なのに方向性が間違っている気がする。もう少しターゲットを狙い撃ちした企画で進められなかったのかな…と残念でならない。