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春は馬車に乗って 遠藤周作

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コロナウィルスが蔓延しはじめてから、ほとんど本を読めていない。

自分自身や夫の勤務体制が変わったり、子どもの休校があったりして、時間がなかなか取れないのに加えて図書館の休館。

さらに言うなら保育士試験の勉強や実母の入院・手術等の予定があるので、ガッツリ本を読む時間が取れずにいる。

そんな中、ふと手に取ったのが遠藤周作の『春は馬車に乗って』と言うエッセイ集。本棚にある文庫本を再読してみた。

『春は馬車に乗って』はエッセイ集と言っても、テーマを持って書かれたエッセイ集ではなくて、色々な媒体に寄稿した文章の寄せ集め。長時間集中した読書が出来ない時には良いかと思う。

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春は馬車に乗って

ザックリとこんな内容
  • 30年間あちこちに掲載されたエッセイの寄せ集め集。
  • 文学、宗教、医療とテーマは多岐にわたる。
  • 遠藤周作の優しさが滲み出る遠藤周作ファンなら読んでおきたい1冊。

感想

昭和に書かれた作品なので、考え方は正直古い。小説と違って、エッセイの場合「ネタの新しさ」も面白さのうちだと思うので、今になって読むと違和感を覚える内容のものもけっこうあった。

ただ「遠藤周作はあの時代にこんな提案をしていたのか!」と感心させられる部分も多々あった。

遠藤周作は子どもの頃から身体が弱くて、死ぬまで病院とは切っても切り離せない人だったのだけど1982年に毎日新聞に寄せたコラムの中で「病院に心療科の医師をスタッフに加えて欲しい」と言うことが書かれてあるのだ。

最近はうつ病等、神経科や精神科についての認知度が高くなっているけれど、1982年当時は「心療科」なんて知らない人の方が多かったのではなかろうか?

遠藤周作は病気を治していくにあたって「身体だけでなく心のケアも」と訴えているのだ。なんかちょっと凄いな…と改めて思った。

個人的に面白かったのは「悪霊小説が流行っている」と言う話題について書かれた文章。遠藤周作自身も『悪霊の午後』と言うホラー小説を書いているのだけど「あれは流行りに乗っかりたくて書いたんだなぁ…」としみじみした気持ちになったしまった。

ちなみに『悪霊の午後』は本気でホラー小説を書いている作家さんの足元にも及ばない、箸にも棒にもかからない仕上がりになっている。

1番興味深かったのは、ジル・ドレやエリザベート・バートリーについて書かれた文章。遠藤周作は『月光のドミナ』でSMをテーマにした短編を書いているけれど、キリスト教をテーマにした作品を追求しながら、そういう世界にも興味があったのだな…ってことを再確認した。

遠藤周作の文学を紐解くのに役立つような内容もあれば「チラシの裏」に書かれたような短文などもあり、洗練された1冊とは言えないけれど、遠藤周作が好きな方には是非オススメしたい1冊。

10年以上以上ぶりに再読したけれけど、新しい発見があって良い読書が出来た。

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白い木蓮の花の下で
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