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月光のドミナ 遠藤周作 新潮文庫

『月光のドミナ』はドロドロ系の作品ばかりを集めた遠藤周作の初期短編集である。

私が持っている短編集の中で、いっとう贔屓にしていて、もう何度読んだか分からないくらい再読している。

「人間って嫌ぁねぇ」と思ってしまうようなドロドロさと陰気さが、秀逸である。

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月光のドミナ

暗い波間から現われた全裸の金髪女性に頬を打たれ、自己のマゾヒストとしての運命を確認する画学生千曲の暗い欲望に迫る「月光のドミナ」。

外国旅行中、結核が再発した夫に南仏見物を同意させる妻のわがままを描く「再発」。

ほか「シラノ・ド・ベルジュラック」「あまりに碧い空」「パロディ」「寄港地」「宦官」「松葉杖の男」「地なり」「イヤな奴」「葡萄」を収録。

作中人物の心に潜む暗い衝動やエゴイズムや恐怖を、そのまま描き出す誠実な筆致と明確な構成を持つ初期短編11作。

アマゾンより引用

感想

収録作品は、どれも名作だと思うのだけど私が好きなのは表題作になっている『月光のドミナ』である。

作者がフランス留学時代に知り合った男性(もちろん創作)の苦悩をキリスト教にひっかけて書いている。

主人公の男性は、周囲から男色家だの変人だのと見られていたのだが、じつは被虐趣味があり、そのことについてずっと苦しんでいた……というお話。

被虐趣味である自分が恥ずかしいというよりも、むしろ「もっと。もっと」と快感を求めるのに、いつかその快感にも慣れてしまい、満たされない日々を送らなければならないことと、頭の中では「明るい世界に行きたい」と思っているのにどうしても、そうできない苦悩が心に痛い。

そして何よりも素敵だと思ったのはラストにジュリアン・グリーンと司祭のやりとりを持ってきたところだろう。

イエスは私たちの苦しみを背負ってくれると言うが、肉欲の苦しみは知らないだろうと質問するグリーンに司祭は答える。

「いいえ、彼は我々の肉欲の苦しみも背負ってくれるのです。背負ってくれるのです……」

以前、某キリスト教宗派の人と話をして、その宗派では同性愛は悪とみなされ「救われない存在」として扱っていること知った。

「そんな宗教なんて願い下げじゃい」と思った覚えがあるのだが、作者の書くイエスなら、人間のドロドロしたところも受け入れてくれるようなイエスなら「ちょっといいかも」と思ってしまう。

私自身そう立派な人間でないだけに余計にそう思うのかも知れないけれど。

ドロドロした話の多い短編集だが、病院の夜の出来事を書いた『葡萄』などは、哀しいながらもホッとさせられるものがある。

救いがなそさうで、救いがあるあたりが遠藤作品の持ち味なんじゃないかと思う。

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