『お姫様は「幕末・明治」をどう生きたのか』は幕末&明治の姫君をテーマにしたエッセイ。Audibleで耳から聞いた。
幕末&明治の女性の生き方…って小説になりがちなテーマで私もいくつか読んでいる。有吉佐和子の『和宮様御留』とか宮尾登美子の『天璋院篤姫』とか。激動の時代…ってこともあって、小説ネタになりやすいらしく書き出したらキリがないくらい。
……しかしアレだ。私が好きな幕末&明治の作品って、結局のところ小説なので史実とは違う。作者の妄想あってこそのもので、そうでなければ創作じゃない。
「じゃあ、実際はどうだったのか?」ってところを知りたいのであれば『お姫様は「幕末・明治」をどう生きたのか』は良い1冊だと思う。
お姫様は「幕末・明治」をどう生きたのか
- 激動の時代をたくましく意思を持って生き抜いたお姫様がいた。
- 幕末から明治にかけての激動の時代。戊辰戦争で勝者となった元殿様たちは、新政府で要職を務めたり、外交官や実業家となって腕をふるった。いっぽうで生活に困り農民になったり、宮司としてひっそりと世を去った元殿様もいる。
- では、大名や公家のお姫様たちは、幕末・明治をどう生きたのか? お姫様達の幕末・明治を紐解く。
感想
この本を読んで感心したのは「小説家って凄いな!」ってこと。今まで小説で読んで知っていたお姫様達のイメージと史実のイメージが全然違う。そしてさらに言うなら、小説の方が史実よりも断然面白い。
「真実は小説より奇なり」と言うけれど実際は小説の方が面白い気がする。だって、小説は人間が読んで楽しむために作ってるのだもの。面白くて当たり前なのだ。史実はあまりにも淡々としていて、お姫様だろうが庶民だろうが人生の大変さは変わらないみたい。
感心したのはお姫様達の中には猛烈に有能な人がいた…ってこと。勉強熱心でバイタリティがあって激動の時代にあっても世の中の役に立つ人間として生き抜いた人も多かったみたい。ただ、その一方でやんごとなき身分であっても、その辺の庶民の女性と大差ないような生き方をした人もいて、結局のところお姫様だろうが庶民だろうが「個人差」ってところに行き着くのかも知れない。
興味深かったのは、限られた女性しかピックアップされていないにも関わらず乳癌にかかった人が何人もいた…ってこと。女性は昔から乳癌に悩まされていたのだなぁ。そして幕末・明治に乳癌の手術を受けているあたりはお姫様ならでは。庶民だったら死ぬしかなかったと思う。ちなみに乳癌の手術については『華岡青洲の妻』にも登場するので、小説好きにはグッとくるものがあった。
『お姫様は「幕末・明治」をどう生きたのか』は史実を追ったもので娯楽性は低いものの、小説をより深く楽しむための副読本としては役立つ1冊だと思う。お姫様だけでなく「殿様」をテーマにした『殿様は「幕末・明治」をどう生きたのか』もあるようなので、また追々と読んでみたいと思う。