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永遠の都 加賀乙彦 新潮文庫

文庫本7冊揃いの長編小説。あまりの長さに2002年の夏の半分をこの作品に費やしてしまった。

時代は大正二年から第二次世界大戦が終わるまで。外科医時田利平と、その一族の物語で北杜夫『楡家の人々』とイメージが被るようなシュチュエーションで話が展開されていく。

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永遠の都

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日本版「戦争と平和」であり、昭和史の克明な記録でもある、自伝的大河小説。

貧しい家から身を起こして海軍軍医になり、やがて一代にして東京三田に大外科病院を作りあげた外科医時田利平。

昭和10年代から太平洋戦争をへて戦後の復興の時期にわたる時代、一時は炎都となった東京を舞台に、彼とその一族三代それぞれの波瀾の生涯をドラマチックに描く長編。

アマゾンより引用

感想

作者の加賀乙彦は、精神科医で、キリスト教徒であると知っていたのでヘビーな正当派純文学を想像していたのだが、どちらかと言うと、通俗小説というか、大河ドラマ的な要素が濃かったように思う。

もちろん重たいテーマが描かれていない訳ではないのだけれども、やたらと色恋ネタの占めるウェイトが高くて驚いた。

これは長編小説を「飽きさせず」に読ませるための技術なのだろうか?

それとも、人間の興味は結局のところ「色恋」に行き着いてしまうがゆえに色恋ネタを重要視したのか?

その辺のところは定かではないのだが、そのおかげで、長い小説だったが、苦にならずに読み通すことができた。

世代が変わっていくタイプの長編小説の楽しみというのは月並みな感想だが、親から子へ、子から孫へと続いてゆく系譜を読み解くことと、時代の移り変わりを感じることにあると思う。

特に大正から昭和にかけては、激動の時代で日本人の価値観が180度転換した時期でもあるので今まで正しいとされてきたことが、あっけなく否定されたりする。

そんな時代の流れの中で、それでも自分のいるべき場所を守りながら生きていく人の姿はそれだけでも充分感動に値するものだと思う。

時代が移りゆく中で、人が生まれたり死んだり喜びも哀しみも、流れてゆき、受け継がれてゆき人の世が続いてゆくのだなぁ……という感慨が、この作品にはあるように思った。

この小説は長編だけあって、登場人物がたくさん出てくるのだが特に女性の生きざまが鮮やかに描かれていて女性の愛の物語と言っても過言ではないと思う。

中でも夏江と初江という姉妹の対比がとても印象的だった。

姉の初江は、顔立ちも普通、頭の回転も普通なごく平凡な女。

妹の夏江は、美しい容姿と、瑞々しい完成と、豊かな知性を持つ魅力的な女性である。

2人はともに「不倫」という形の愛を体験する。

だが2人の愛の形は、まったくその形が違っていた。

黄金パターンだと妹の夏江が激しく愛を貫く……ということになりがちなのだが読者の期待を裏切って、凡庸とも思える姉の初江が妹の夏江以上に豊かな愛情を見せてくれるのだ。

凡庸な初江には、人を愛し抱擁するだけの器があったのだが美しく聡明な夏江は人を包み込むほどの豊かさは持ち合わせていなかったという事実は人間にとって、大切なものは何かということを考えさせられてしまった。

平凡な初江に、そういう役回りを与えた作者の手腕に思わず「上手いなぁ」と呟いてしまった。

物語の半ばに夏江が姉の初江を「いてくれるだけで、ほっとする存在」評する場面があるが自分の周囲を見渡してみても「存在そのものが、ほっとする」というタイプの人はがいる。

それもまた、1つの才能というか、徳なのだなぁ……と思わずにはいられない。

人の価値なんて、簡単には計れないし、そもそも計るものではないのかも知れない。

この作品の中には、初江と夏江以外にも、道端に咲く野草のようにひっそりと生き、人を愛し、激しく主張することのない女性が多く登場する。

あの時代には……もとい今も、彼女達のように、しめやかに生きる女性は多いのだろうなぁ。

サイドストーリーにも、小技がきいていて見逃せない部分が多かった。

長編小説を背負って立てるほどパンチのあるヒロインが不在だっのは残念だが、さまざまな女性の生き様を読むという点では読み応えのある作品だった。

人の数だけ、愛の形もあるのだなぁ……と思った1冊である。

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白い木蓮の花の下で
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