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トットひとり 黒柳徹子 新潮社

黒柳徹子の作品を読むのは小学生以来。小学校の中学年頃に『窓際のトットちゃん』がベストセラーになって、親が読んでいたのを夢中で読んだ覚えがある

。電車の学校とか「海の物とも山の物」が入ったお弁当とか、子ども心に羨ましかった覚えがある。ちなみに当時は『窓際のトットちゃん』と『徹子の部屋』の黒柳徹子とは全く結びついていなかった。当時は自分と同世代の女の子のお話として純粋に楽しんでいた。

『トットひとり』は黒柳徹子がテレビで活躍するようになってからの話が中心になっている。森繁久彌、渥美清、向田邦子、久世光彦、久米宏など、昭和に生まれた人なら誰でも知っているような業界人が目白押し。と言っても、私自身は森繁久彌も渥美清も実のところよく知らない人だったりする。向田邦子と久世光彦に関しては作家として認識していてテレビ業界の人というイメージはほとんど無い。なので登場した人達にはこれと言った思い入れもなければ、良い意味でも真っ白な状態でそれぞれのエピソードを読ませてもらった。

沢山の人が登場するのだけど、中でも渥美清のエピソードが心に残った。黒柳徹子の事を生涯「お嬢さん」と呼び続けて兄のように可愛がってくれたとのこと。しかもお互い最初の印象が悪かったと言うのも興味深い。

渥美清はガンで闘病中だったのをずっと周囲に隠していたらしく、周囲ではそれとなく気付いている人が多かったのに黒柳徹子だけは渥美清が死ぬまで彼に騙されていたと言う話にはグッっときてしまった。役者さんは役とプライベートは別物だと言うけれど、渥美清がそんな人となりだったからこそ『男はつらいよ』の寅さんを演じる事が出来たのかな……なんて事を思った。

また森繁久彌が女好きだったって話も面白かった。

森繁久彌の女好きは私が知らなかっただけで有名な話かも知れないのだけど、私が森繁久彌を意識した時はすでに「いいお爺ちゃん」な雰囲気でジゴロだったなんて思いもよらなかった。森繁久彌はそれこそ死ぬまで「ねえ、一回どう?」と言い続けたらしい。このテの男性って実際にかかわるのは正直ゴメンだけど話として読むには面白い。

どのエピソードもテレビ黄金期を感じさせる勢いのある話ばかりだった。

景気が良くて読んでいて気持ちが良かった。「海千山千」と言う言葉があるけれど、芸能界ってまにそんな感じ。タレントのエピソードを聞くと「芸能界だけは駄目だと親に反対された」なんて話が当たり前のように出てくるけれど、実際には綺麗なばかりではないのだとは思う。森繁久彌の話にしても、向田邦子のロマンスにしても美談的に語られてはいるものの、一般人だったら美談どころか不倫話でしかない。

……と。そんな堅い話は横に置いておくとして。黒柳徹子って人は多くの人から愛されてきたのだなぁ……とつくづく思った。

表紙のヌード写真は篠山紀信の作品とのこと。黒柳徹子と言うと「タマネギ頭」しか知らないので、意外だったし「綺麗だなぁ」と感心した。黒柳徹子ご本人は自身が発達障害だと告白しているし『窓際のトットちゃん』からも「そうなのかも知れないな」とは思うものの、それを補ってお釣りがくるくらい素晴らしい何かを持っているのだと思う。読んでいて元気になるような、善意と愛に満ちた1冊だった。

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トットひとり 黒柳徹子 新潮社

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