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現役JKと成瀬(成瀬は天下を取りにいく)を語る。

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今年は久々に家族で同じ本を読む体験をした。

これまで「私と夫」だったり「私と娘」だったりが同じ本を読むことはあったけれど、家族全員で読むことは珍しいし、さらに言うなら家族全員が気に入ることはもっと珍しい。

久々に家族でハマったのは2024年度の本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』だ。

高校2年生になる娘が主人公の成瀬と同じ年頃だった…ってところで共感性が高く、成瀬の通う膳所高校は滋賀県屈指の進学校…ってことで、娘の通う高校と雰囲気が似ているのも良かった気がする。

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同族嫌悪するほど解像度の高い登場人物

私自身は成瀬とその周囲の人々を母親目線で愛でていたけれど、娘は自分と似た年頃の成瀬を身近な存在として読んでいたみたい。そして娘は生まれて始めて「同族嫌悪」の感情を知った。

娘は『成瀬は天下を取りにいく』の登場人物の大貫(大貫かえで)が大嫌いらしい。

大貫かえでは膳所高校1年生。小学校・中学校ではクラスカースト的にパッとしないポジションで生きていたが、高校入学と同時に高校デビューを試みるもあえなく挫折。承認欲求が強い大貫は「東大に行く」と言う目標を設定し、高校デビューに失敗後は東大に焦点を絞って高校生活を送る。

大貫かえでの何が娘の気に触ったのかと言うと、意識的に高校デビューしたいと奮闘したところにある。私も初めて『成瀬は天下を取りにいく』を読んだ時「この子、娘と同じだわ」と思ったくらいだ。

体育会系の娘と部活もせず帰宅部の大貫とではタイプが違うのだけど、やたらと周囲の目を気にするところとか、クラスの人間関係をくまなくチェックしてしまうあたりは娘と大貫は完全に一致する。娘は「生まれて始めて同族嫌悪をしたかも知れない」と語るくらいに大貫の言動にムカついたらしい。

『成瀬は天下を取りにいく』はヒロインの成瀬あかりの突拍子もない行動にばかり目がいきがちだけど、周囲にいる人間達の解像度が高いところがポイントなのだと思う。

大貫だけでなく、成瀬の親友の島崎にしても、他校の生徒ながら成瀬に絡んでくる西浦航一郎にしても「あ…こんな奴いるよな」と思わせる人物設定になっている。

脇役も物語の主人公級に濃いよね問題

娘は大貫かえでに対して同族嫌悪するくらいにはムカついたそうだけど「大貫かえでも面白いキャラではあるよね」と言う。

地域は違うけれど娘が通う高校も膳所高校と同じく公立高校。そして膳所高校くらいの偏差値で東大・京大に進学するくらい優秀な生徒がわんさかいる(娘がそうだとは言わない)

娘の言い分はこうだった。

大貫、ムカつくけどクラスにいたら絶対に面白いと思う。うちの高校でも東大行きたい…って思ってる子はいるけど、1年生の頃から大貫ほど高校生活を勉強に全振りする子はいないし、むしろ面白い。

そう。『成瀬は天下を取りにいく』の中の登場人物達は単体じ主人公になれるくらいにキャラが濃い。「あんな奴いるよな感」はありつつも、深堀りすると「そんな奴おらんやろ?」な人達ばかりなのだ。

キャラ立ち小説としての作品

『成瀬は天下を取りにいく』は物語性云々よりもキャラ立ちの勝利だと思う。成瀬あかりを筆頭に全員面白い。

『成瀬は天下を取りにいく』は続編『成瀬は信じた道を行く』が出ているけれど、続編の登場人物達もなかなかのもの。本編が気に入った人は安心して続編も読んで戴きたい。

……とは言うものの。成瀬シリーズはキャラ立ち小説としては面白いけれど、物語自体の面白さや、主人公成瀬の成長小説としては少し弱い。

成瀬も様々な人と関わることによって少しは成長しているな…と感じるものの、心の動きが描かれていないので、ずっと素っ頓狂な動きをしている印象。

続編で成瀬は大学生になっているので、さらに続編を…となるのであれば、成瀬あかりの人としの成長も見せて欲しいところではある。

それはそれとして。1冊の作品を家族で共有して語り合うのは楽しい経験だった。娘と私は読書傾向が違うので、なかなか同じ作品で語り合うのは難しいのだけど、またこんな機会があればいいな…と思う。

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