自分の知らない世界を垣間見るのは楽しい。『女官 明治宮中出仕の記』は明治天皇と皇后に仕えた最年少女官の手記。なんとなくだけど『枕草子』っぽい風情があって面白かった。
「世間ではこう言われていましが、実際はこんな感じで…」みたいな話もあった。『女官 明治宮中出仕の記』に描かれている事が真実かどうかは分からないけれど、ゴシップ雑誌を読むような楽しみもあり、気楽に楽しめる作品だと思う。
女官 明治宮中出仕の記
- 明治天皇と昭憲皇太后に仕えた女官の手記。
- 華族、久世家の長女、山川三千子が宮中のしきたりや天皇皇后のを生々しく伝える。
- 天皇、皇后の睦まじい様子や皇室内でのローカルルールなどを生き生きと描く。
感想
皇室をテーマにした小説やエッセイって、これまでも何冊か読んだことがあるけれど『女官 明治宮中出仕の記』は今まで出版された物と切り口が違っていて面白かった。
皇室暴露ネタって男性側近者が多い気がするけれど、今回は女官目線。しかも仕えていた女官の中で最年少だった女性…ってところが新鮮だった。下っ端(と言っても華族出身の超お嬢様)から見た天皇皇后両陛下…ってアプローチはかつてなかった気がする。
感心したのは「皇室で働くことの不自由なことが多いので自由に暮らしてきた士族出身者より、小さい頃からがんじがらめで制約を受けて育てられた華族者の方が向いている」ってこと。
庶民からすると超セレブの生活って「素敵~憧れちゃう~」って感じだけど、実際は自由がなくて規律に縛られている。そしてセレブの中でも華族と士族では大きな差があって「やんごとなき家柄の令嬢」として生きることの不自由さを感じさせられた。
著者の山川三千子は文学少女気質だったようで「親の言うままに結婚させられるくらいなら女官になる方がマシかな」くらいのノリで出仕したみたい。実際、仕えていた天皇皇后両陛下が崩御されて失業した後のくだりは、恋に夢みたりしつつも親の言う人と結婚している。
高貴な人達って華やかで苦労のない生活を送っていそうだけど、だからって庶民より幸せとは言い切れないのかな…なんてことを思ったりした。
…とは言うものの「置かれた場所で咲きなさい」ではないけれど、どっこい人は生きていく。制約の多い宮中での生活も楽しいことがあったようで、朗らかな描写は読んでいて楽しかった。
私は小説が好きなので、エッセイやノンフィクション系はあまり読まないけれど、たまに読むと気分転換になって良いものだと思った。