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陸王 池井戸潤 集英社文庫

池井戸潤は前回読んだ『ハヤブサ消防団』があまりにも自分の好みから外れていたので「もう2度と池井戸潤なんか読むもんか」みたいな気持ちになっていたのだけれど、人から「面白いから読んでみて」と進められたので読んでみることにした。

その結果…面白かった。

こう言う感じなら違和感なく読める。池井戸潤は企業系をテーマにした作品の方が良いのかも知れない。

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陸王

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ザックリとこんな内容
  • 主人公の宮沢紘埼は玉県行田市にある老舗足袋業者「こはぜ屋」の四代目社長として日々奮闘していた。
  • 和服離れが進み、足袋の製造がジリ貧となる中で宮沢は会社存続のためにある新規事業を思い立つ。
  • 宮沢は「こはぜ屋」が長年培ってきた伝統の技術を駆使してランニングシューズの開発をしようと思い立ったのだった。
  • 世界的スポーツブランドとの熾烈な競争、素材探し、開発力不足…数々の難問が立ちはだかるなか、従業員20名の地方零細企業が一世一代の勝負に打って出る。

感想

『陸王』は足袋製造業の中小企業が自分達の技術と新しい素材を使ってランニングシューズを開発し、ランニングシューズ業界に殴り込みをかける…と言う浪漫溢れる熱い物語だった。

私はマラソンどころかランニングさえした事がないので「足袋業者がシューズ業界に参入する」のが現実的にどうなのかは分からないけれど「こはぜ屋」のモデルになった企業があって「きね屋」と言う足袋メーカーが「MUTEKI」と言う足袋っぽいランニングシューズが販売されている。

中小企業が技術力で大手業界に殴り込みをかけるだなんて、そうそう簡単にはいかないと思うのだけど、これが案外テンポ良くサクサク進んでいく。

物語は常に「一難去ってまた一難」の繰り返し。大きな壁を乗り越えたかと思うと、すぐさま次の壁が立ちはだかる。読んでいて飽きる要素が全くなくて、常に「これからどうなっていくんだろう?」と言う気持ちで読み進めるとか出来た。

物語の構成の面白さだけでなく「人情譚」としても良かったと思う。「人との繋がり」が物語を引っ張る大きな要素になっていて人間は社会的動物である…ってことを実感させてくれた。

ただちょっと残念だったのは人間の作り方が漫画的だった…ってこと。善人と悪人の線引きが分かりやすくて時代劇の『水戸黄門』を診ているような勧善懲悪ぶりは「スカっとする」を通り越して、ちょっと薄っぺらいような気がした。

…とは言うものの「仲間達が一致団結して頑張る」とか「努力した人間が報われる」って展開は気持ちが良い。ツッコミどころもあったけれど「面白いかどうか?」と聞かれたら「面白かったです!」と素直に言える作品だった。

ハヤブサ消防団』を読んで「池井戸潤はもう読みたくない」って思っていたけど、池井戸潤に脂が乗っていた「ちょっと昔の池井戸潤」の作品なら今後も読んでみたいな…と思った。

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