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サラバ! 西加奈子 小学館

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『サラバ!』は第152回の直木賞受賞作。西加奈子の作品は過去に2作ほど読んでいるものの、私にはイマイチ刺さるところがなかったので、直木賞を受賞した時も「読んでみよう」とは思わなかった。

今回はアマゾンオーディブルで聞いてみることにした。長編作品ではあるものの、耳から聞くならアリかな…と。

まず結論から書くけれど、やっぱり西加奈子の作品は私の性には合わなかった。とは言うものの直木賞を取るに相応しいボリューム感のある作品ではあった。

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サラバ!

ザックリとこんな内容
  • 主人公、圷歩1977年に父の海外赴任先であるイランで生まれた。
  • 歩はエリートサラリーマンの父と美しい母、変わり者の姉の4で暮らしていたがイラン革命の後、帰国して大阪で暮らす。
  • 大阪で小学生生活を楽しむ歩だったが、次は父の都合でエジプトに移り住む。
  • 歩は父の海外赴任先だ。チャーミングな母、変わり者の姉も一緒だった。
    イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度はエジプトへ向かう。
  • エジプトで歩は彼の今後の人生を左右する人物と、心の支えとなる言葉を手にするのだが…。

感想

なんだろう…このモヤモヤ感。思うに。主人公の歩は作者の西加奈子自身を投影した人物なのだと思うのだけど、私は最初から最後まで歩のことを好きになれなかったし、そうかと言って歩の境遇を思えば「なんだよ。このクズ野郎」とも思えなかった。

ザックリ説明すると歩はイケメンでほんの少しの努力で何でも手に入るお坊ちゃん。それなのに虚栄心が強くてルッキズムに囚われるているタイプのイケスカナイ男として描かれている。

だけど歩は奔放で子どもっぽい母、発達障害気質があり中卒で厨二病で新興宗教にハマっちゃう系の面倒くさい姉、何考えてるか分からない修行僧のような父…と言う個性的過ぎる家族の中で育っていて「家庭環境には恵まれない可哀想な子」ではある。

「じゃあ、可哀想な境遇の人だったら何やってもいいの?」って話になる訳だけど、そこは安心して戴きたい。歩はクズ野郎ではあるものの物語後半からは気の毒過ぎる状況になっていく。その辺りでちゃんと帳尻を合わせてくるあたりは「なるほどなぁ」とは思うものの、主人公の歩は人によって好き嫌いの分かれるキャラクターだと思う。

私が歩に寄り添うことが出来なかったのは、歩が友人に対して猛烈な依存心でもって接してしまうところだった。

歩が友人に対して抱く感情は「同性愛と呼んでも良いのでは?」と思うほどの入れ込みよう(作中でも仄めかす表現がされている)で、まぁ…そいう言う気持ちになるのは分からなくもないし「最愛の友人」がいるのはアリだと思うものの、そのお相手が次々と変わっていくとこは微妙過ぎた。なんかこぅ…ボーイズラブ的なのだ。私は女性なので本質的に男性の気持ちは分からないのだけど、歩みたいな嗜好の男性っているんだろうか?

人間関係の移り変わりがあまりにもご都合主義的で最後まで読んでも納得がいかなかった。

ただ「物語」としては骨太で面白かった。歩がイラン、エジプト、日本の三カ国で生活した描写は良かったし、クレイジーで自分勝手な家族も「あ~。酷い家族と言えばそうだけどリアルだ…」みたいな気持ちにはなった。

そして何より「狙ってるよね」と思ったのは、1977年に生まれた歩バブル社会、阪神大震災、オウム真理教騒動、アメリカ同時多発テロ事件、東日本大震災等を経験していて「ここ40年ちょっとで起こった出来事」を網羅していて「なんとなく読む最近の日本史」みたいな形を作っていた…ってこと。長い物語だけど、テンポが良くて飽きることなくグイグイ読み進めることができるのは『サラバ!』の魅力だ思う。

『サラバ!』は直木賞に相応しいボリュームと勢いのある作品だとは思ったけれど、好き嫌いを問われたら、私は正直好きじゃない。主人公を好きになれなかったのが決定的に駄目だったと思うし、放蕩を尽くした姉が最後で良い感じに落ち着いているところがどうにも納得がいかなかった。

ただ、世界のことや宗教のことを考えるキッカケ本としては良いと思うし「なんかムカつくな~」と思ってしまうくらいに心を揺さぶられる作品だはあった。

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