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ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治 新潮新書

『ケーキの切れない非行少年たち』は一時期ちょっとした話題になってベストセラーだった気がするけれど、なんとなく今まで手に取らずに来てしまった。

手に取らなかった理由は色々あるけど「内容の想像がつく」って部分が大きかった。

題名を聞いて「ケーキを切れないのは知的障害か発達障害があるから…って話だよね?」と予想していて、実際その通りだったのだけど、予想していていた以上には面白かった。

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ケーキの切れない非行少年たち

ザックリとこんな内容
  • 児童精神科医として精神科病院や医療少年院に働いていた筆者が非行少年たちと出会う中で、「反省以前の子ども」が沢山いるという事実に気づく。
  • 少年院には、認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない非行少年が大勢いた……と言うところが作品の題名になっている。
  • 人口の十数%いるとされる「境界知能」の人々についてや「どう対応していけば良いのか」について描く。

感想

私の親友は現役で生活保護のケースワーカーをしているのだけど、彼女が言うには「知的障害か発達障害ギリギリの人がめちゃめちゃ多い」と話していたことがある。

生活保護を受ける人のことを「社会のクズ」「自己責任」と言う人が多いのだけど、親友が言うには「それもあるけど、あの人達はやらないのではなくて、出来ないんだよ」とのこと。

『ケーキの切れない非行少年たち』に登場する少年たちも「出来ない」人達だった。

そして私が面白いと思ったのは、そんな彼らの思考パターンが丁寧に描かれていた…ってこと。

例えば殺人や傷害を犯した少年も「自分は優しい人間です」と言う…みたいなエピソード。彼らが自分を優しいと言う理由は「お年寄りに優しくできる」とか「小さい子に優しい」ってところが根拠。だけど「じゃあ、人を殺すのは優しいことなのかな?」と質問すると「あ…優しくないです」と答えるらしい。簡単に言うと「考える力が足りていない」ってこと。

知的障害のボーダーに引っ掛からないけれど、社会生活を営むのが難しい程度の知能の人間は35人学級の場合5人くらいはいるそうだけど、なんとなく腑に落ちる数字だと思う。

じゃあ、その5人が全員犯罪者になるかと言うとそうではなくて、正しい環境と教育の場が与えられれば普通の人と同じレベルで生活ができる。だからこそ「じゃあ、どうやって導いていきましょうかね?」ってところが『ケーキの切れない非行少年たち』のテーマだった。

私は現在、障害を持ったお子さんが通う放課後等デイサービスという児童施設で働いているけれど、色々と通じるところがあって勉強になった。

子どもに対する教育は重要だと思う。

賢い子をより賢くして東大に送り込むことは素晴らしいし、普通くらいの子をゴリゴリに鍛えて賢い大学に送り出すことも素晴らしい。だけど「普通の枠からはみ出てしまっている子を良き社会人として世の中に送り出す」ってことも大切な教育だ。

最近、知的障害や発達障害、精神障害を持った人が事件を起こすケースが増えているけれど、彼らを責めるだけでは世の中は何も進んでいかない。

「彼らのように事件を起こす人間を作らないためにはどうしたら良いのか?」を考えて、相応の教育を行っていかなければ、あの類の事件は繰り返され続けると思う。

色々と考えさせられる1冊だった。そして続編が出ているそうなので、早速図書館に予約を入れた。

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