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イニシエーションラブ 乾くるみ 文春文庫

『イニシエーションラブ』は発売当初に「2度、読みたくなるミステリ」みたいな煽り文句で宣伝されていて、なんとなく記憶の端に残っていたのだけれど、図書館の「オススメ本」の棚にあったので、読んでみることにした。

私はミステリ系は苦手なので「トリックとか言われても無理だよなぁ」と思って手に取ったものの、なんかこぅ…本が好きな人が読めばトリックとか分からないマンでも勘で色々分かっちゃう感じの作品だった。

『イニシエーションラブ』はネタバレしちゃうと台無しになるタイプの作品なのだけど、今回の感想は盛大にネタバレしているので「読もうかな」と思っている方は、本を読んでから感想を読んで戴きたい。

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イニシエーションラブ

ザックリとこんな内容
  • 「最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する」と注意書きが施されている「仕掛け」ありきの作品。
  • 「僕」こと鈴木は、友人の望月から代役で呼ばれた合コンで出会ったマユに心を惹かれる。
  • 女性に対して奥手な鈴木はコンパでは上手くマユと喋ることができなかったが、その後同じメンバーで誘われた海水浴でマユと再会を果たす。
  • あるキッカケからマユから連絡先の電話番号を教えてもらった鈴木はマユと交際を初めるのだが…。

感想

題名になっている『イニシエーションラブ』は「通過儀礼の恋愛」と言う意味だそう。スマホどころか携帯電話もないバブル期の男女の恋愛がメインになっていて、昔の歌謡曲が章の題名になっている。

side-A、side-Bと分かれていて、それぞれ違う側面から描かれている。参考までに章の題名をご紹介しておく。若い人には分からない仕掛けだけどside-A、side-Bはカセットテープの「A面」「B面」の意味。50代以上の人間はカセットテープとか言われたら懐かし過ぎて泣いちゃう(笑)

side-A

  • 揺れるまなざし (小椋佳)
  • 君は1000% (1986オメガトライブ)
  • Yes-No (オフコース)
  • Lucky Chanceをもう一度 (C-C-B)
  • 愛のメモリー (松崎しげる)
  • 君だけに (少年隊)

side-B

  • 木綿のハンカチーフ (太田裕美)
  • DANCE (浜田省吾)
  • 夏をあきらめて (研ナオコ)
  • 心の色 (中村雅俊)
  • ルビーの指環 (寺尾聰)
  • SHOW ME (森川由加里)

ネタバレ込での感想

さて。「2度読みたくなる」とか「最後の2行を読まないで」みたいな煽り文句を付けての販売だけど、私は2度読みたいとは思わかなったし、最後の2行を読んだ時に「やっぱりね」くらいにしか思えなかった。

トリックの全てが分かっていただけではないけれど「勘」だけでも違和感を感じる作りになっていたのが残念過ぎだった。

『イニシエーションラブ』は鈴木とマユの物語なのだけど、主人公である鈴木は2人いてside-Aの鈴木とside-Bの鈴木は別人だった…ってオチ。清純そうであり、なんとなく被害者っく描かれていたマユは最初から(たぶん物語の途中から)二股を描けていた…って話。

さて。私がどうしてマユは怖い女でside-Aの鈴木とside-Bの鈴木が別人だと気がついたかと言うことを解説したい。

side-Aではマユと鈴木の恋愛の始まりが描かれている。鈴木の目から見たマユは「華奢で少女のような女性」「控えめで可愛らしい女性」として描かれているのだけど、恋愛の手法は控えめどころか女郎蜘蛛。「いやいや…普通の女性はここまでやりませんって」みたいな気持になって読んでいた。

「鈴木~逃げて~そいつ間違いなく悪女~」としか思えない展開。たぶん恋愛経験のある女性達は全員「マユには絶対裏がある」「こんな女おらん」とツッコミを入れていたと思う。なのでマユが二股をかけていた…ってことが明かされた時も「まぁ分かる」と全く驚くことができなかったのだ。

そしてside-Aの鈴木とside-Bの鈴木が別人だと思ったはの、この2人の性格が全く違っていたことにある。

side-Aの鈴木は真面目なシャイボーイなのにside-Bの鈴木は神経質なところがあるものの、基本的にはウェイ族で同一人物とは思えなかった。そして、そもそも就職先が違っていたところで「別の世界線の話が始まったの?」と捉えてしまっていた。

……とは言うものの私はトリック大好き民ではないので「マユは悪女である」「side-Aの鈴木とside-Bの鈴木が別人である」と言う確証はなく、なんとなくダラダラ読み進めていったらラストで種明かしがされた。

なかなかに面白い仕掛けだとは思ったし、作者は書いていてものすごく楽しかったとは思うのだけど、比較的早い時期からオチが予感出来てしまったところが残念だった。せめてヒロインのマユをもう少し普通っぽく…と言うか、リアル女性に寄せてくれていたら騙されたと思うのだけど。

たまには、こういう仕掛け物の作品を読むのも悪くないな…と思ったものの、好きか嫌いかで言うと嫌いに傾いてしまう。もうちょっと上手く騙して欲しかったな…ってところに尽きる。

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白い木蓮の花の下で
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