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バベットの晩餐会 イサク・ディーネセン ちくま文庫

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デジタル・リマスター版で公開された映画『バベットの晩餐会』が猛烈に面白かったので原作小説を読んでみることしにた。

作者のイサク・ディーネセン(カレン・ブリクセン)はデンマークを代表する作家で2009年までデンマークの紙幣になっていたとのこと。名前が2つあるのはデンマーク語版は本名のカレン・ブリクセンで、海外版ではイサク・ディーネセン(男性名)で作品を出版していたから。

私は映画の『バベットの晩餐会』を観るまでイサク・ディーネセンを知らなかったのだけど、映画『愛と哀しみの果て』の原作になった『アフリカの日々』の作者でもある。

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バベットの晩餐会

ザックリとこんな内容
  • 物語の舞台は時代は19世紀、ユトランドの田舎の村。
  • マーチーネとフィリパの老姉妹、今は亡き村の牧師の娘で貧しいながらも清らかな暮らしは村人達の模範として慕われていた。
  • 清貧を貫く姉妹だったが何故かフランス人の家政婦がいた。家政婦の名はバベット。
  • バベットが姉妹の元で働くことになった経緯と、バベットが開催した晩餐会の物語。

感想

私は映画版を観てから原作を読んだので、物語の筋書きは理解した上で読み始めた。原作付きの映画の場合、どんなに原作と寄せたとしてもどこかしら別物になっている事が多いけれど『バベットの晩餐会』は比較的原作リスペクトが強い印象を受けた。

原作と映画の時系列はほぼ同じ。設定等の変更もない。ただ、やはり「どこに焦点を置くか?」ってところで受ける印象は全然違ってくる。『バベットの晩餐会』の場合、原作はマーチーネ&フィリパ姉妹の恋とバベットのエピソードが同等に扱われている感じだったけれど、映画はどちらかと言うとバベットの印象が強く仕上がっている。

映画版の場合、妹のフィリパとオペラ歌手のエピソードについては「これって恋って言うよりもオペラ歌手のセクハラでは?」みたいな印象を受けてしまったけれど、原作は「不器用な恋だった」みたいな感じの描き方だった。

……たぶん…だけど、映画版のオペラ歌手はだらしなく太った中年男だったので、絵面が汚らしくてセクハラに見えてしまったのだと思う。もし、イケメン男に演技をさせて歌のパートは口パクで本物のオペラ歌手の歌声を流していたら印象は変わっていたのだろうけど、映画出演OKの太ったオペラ歌手を起用してしまったのが敗因なのだと思う。

映画版の『バベットの晩餐会』を観た時は「バベット有能だなぁ。そして美味しい食べ物は人を幸せにするし、宗教を越えるね」みたいな気持ちになったのだけど、どうやら原作を読んでみると作者の言いたかった事は違う気がした。

  • 宗教と文化芸術の対比
  • 女性の役割と新しい女性像

……みたいなところが書きたかった気がする。マーチーネとフィリパの姉妹は禁欲的な生活を続けていたけれど、バベットが持ち込んだ物はその対極にある世界。

そしてマーチーネとフィリパ姉妹は美貌を讃えられていたけれど、生きる力が能力が低かったのに対して、色黒でガッチリしたバベットは超有能なキャリアウーマンとして描かれている。

『バベットの晩餐会』では対極にある2つの価値観を描きつつ、互いにそれが歩みよったり理解し合うところを描く…ってところがメインテーマだったのだろう。

ちなみに。ちくま文庫の『バベットの晩餐会』にはイサク・ディーネセンの遺作となった『エーレンガート』も収録されている。こちらの作品もなかなか面白かったけれど、長くなり過ぎてしまうので感想は割愛する。

映画を観なければ手に取る事がなかった作品だけど、読んで良かった。また何かの機会にイサク・ディーネセンの別の作品も読んでみたいと思う。

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