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映画『バベットの晩餐会』感想。

『バベットの晩餐会』は1987年に公開されたデンマーク映画。私が観たのは2016年に公開されたデジタルリマスター版。

今年はまだ半分も過ぎていないけれど、もしかしたら私は今年度最高に面白い映画を観てしまったかも知れない…って思ってる。もちろん年内に『バベットの晩餐会』以上に面白い作品に出会えたら嬉しいのだけど。

予備知識ゼロで観たこともあって、予想外の物語を楽しむことが出来た…って事もあるけれど、日本映画ともハリウッド映画とも違う不思議な味わいの作品で先が読めない面白さがあった。

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バベットの晩餐会

バベットの晩餐会
Babettes gæstebud
監督ガブリエル・アクセル
脚本ガブリエル・アクセル
原作アイザック・ディネーセン
製作ボー・クリステンセン(デンマーク語版)
製作総指揮ユスツ・ベツァー
ナレーターギタ・ナービュ(デンマーク語版)
出演者ステファーヌ・オードラン
ビルギッテ・フェダースピール(デンマーク語版)
ボディル・キュア(デンマーク語版)
音楽ペア・ノアゴー
公開デンマークの旗 1987年8月28日
日本の旗 1989年2月18日
製作国 デンマーク

ざっくりとこんな内容

時代は19世紀、ユトランドの田舎の村が物語の舞台。

マーチーネとフィリパの老姉妹、今は亡き村の牧師の娘で貧しいながらも清らかな暮らしは村人達の模範として慕われていた。

清貧を貫く姉妹だったがもなぜかフランス人の家政婦を雇っていた。家政婦を雇うことになったきっかけは、姉妹の若い頃まで遡ることになる。

マーチーネとフィリパは、牧師である老父と清貧な暮らしを送っていたが村一番の美人姉妹として知られたいた。

姉のマーチーネには地元で謹慎中の若い士官ローレンスが、妹のフィリパには休暇中の著名なフランス人オペラ歌手アシール・パパンが求愛するが姉妹は神と父に仕える道を選び清廉な人生を過ごしながら年老いていく。

ある日も姉妹のもとに、パリ・コミューンによって家族を亡くしてフランスから亡命してきた女性バベットやってくる。バベットはかつて妹のフィリパに求愛したオペラ歌手のパパンの紹介で姉妹の元にやってきたのだった。

姉妹は「家政婦なんて雇えない」と断るのだが「フランスに戻ったら殺されてしまうので、ここに置いて欲しい」と懇願するバベットを見捨てることができず「お金は出せないけれど…」と言う条件で、バベットを家に置くことにした。

バベットは、予想外に有能な家政婦だった。

清貧を良しとする宗派のこの村の食事は、見た目にも舌にも寂しいものだったが、バベットは限られた食材と資金で日々の食事の質を向上させた。そして、賢いバベットは村にもすぐに馴染み、覚えたデンマーク語で軽快に値切り交渉し、老姉妹の家計に余裕が出るようにさえなった。

そして、バベットが老姉妹の元に来てから、14年の月日が流れる。

バベットはすっかり村の人間となり、故郷のフランスとバベットを繋ぐものと言えば、友人が毎年送ってくれる宝くじだけだった。

一方で、村人達の関係は年々悪くなっていた。それぞれが年老いて気難しくなり、牧師館での集会も、ともすれば口論の場となってしまっていた。

そんな村の様子を嘆いた老姉妹は、また信仰心に満ちた日々を取り戻せればと願い、ある祝いの場を企画する。それは村の牧師で宗派の創立者である亡き父の、生誕100周年祭だった。

そんなある日、バベットの買った宝くじが当選し、バベットは1万フランを手に入れる。

1万フランもあればバベットはフランスに戻ってしまうだろうと老姉妹は覚悟を決めるが、バベットは老姉妹に頼み事をする。賞金を使って、100周年の晩餐会に出す料理を作りたいのだという。ただし、内容はフランス料理で、彼女に任せる事。

実はバベットには、姉妹には話していない秘密があった。

バベットはかつて、パリの有名レストランの女性シェフだったのだ。そしてバベットは晩餐会の準備をはじめる。そして……

老姉妹の物語?信仰の物語?

私は予備知識なしで『バベットの晩餐会』に挑んだので、陰気な背景の中で繰り広げられる地味な展開にまずまず驚いたし、ちょっぴりガッカリした。「ああ…これは意識高い系映画ですわ」と。

だけど物語が進んでいくと意識高い系映画とはちょっと違う感じ。「これって信仰の物語なのかな?」と思わせてくる。

断固とした信仰を持たない日本人からすると、猛烈に謎な感覚なのだけど、マーチーネとフィリパの姉妹は若い頃から心が清らかで清貧を貫いていく。いうなればリアル三浦綾子の登場人物…って感じ。『道ありき』の前川正とか『塩狩峠』のふじ子みたいな感じ。

とりあえず前半は老姉妹の信仰と若かりし頃の淡い恋を丁寧に描いていくので「バベットって誰?」「晩餐会って何ソレ?」みたいな感じで、バベットについてはノータッチで進んでいく。

デンマーク版『かもめ食堂』?

信仰に厚い敬虔な姉妹が生きて老いていく物語なんだなぁ…と思わせておいてからの、バベット登場!

バベットは老姉妹に望まれて来た訳じゃなくて、老姉妹はバベットを押し付けられた形での同居生活がスタートする。一応「雇う人と雇われる人」の関係ではあるけれど、賃金労働ではなくて、主従関係はふんわりしている。ただしバベットは老姉妹に「命を助けてもらった恩」を感じている…って設定。

独身女性の唐突な同居生活は日本映画で言うと『かもめ食堂』を思い浮かべてしまうけれど『かもめ食堂』の登場人物と違っていたのは、バベットは有能な人だった…ってところ。

イマイチ気乗りしないままにバベットを受けて入れた老姉妹だったけれど、いつしかバベットは老姉妹だけでなく村にとっても必要な人になっていく。仕事の出来る人はいつの世も重宝されるらしい。

食は人を幸福にする

そしてやっと題名の核心でもある『バベットの晩餐会』が始まる訳だけど、バベットが晩餐会の準備をするあたりから、作品が俄然面白くなる。

有能な料理人の仕事っぷり…って見ているだけでも面白い。

そして晩餐会が始まってからは「美味しいものは人の心を幸せにする」ってことを思い知らされることになる。

老いて偏屈になり、喧嘩ばかりしていた村人達はバベットの料理を食べることで幸せな気持ちになり、本来備わっていた優しい心を取り戻していく。「貧すれば鈍する」と言うけれど、ホントそれ。

険しい表情をしていた老婦人が優しい表情になり、満足げに極上のワインを飲み、料理にに舌鼓を打つ姿は見ているだけで心が温かくなった。

実は私。『バベットの晩餐会』を観るタイミングでちょっとして悩みを抱えていたのだけど「美味しい料理は人の心を幸せにする」って事を再認識したことで、自分の生き方を見直すことができた。

姉妹の淡い恋が晩餐会に通じている

『バベットの晩餐会』は老婦人の恋愛ターンと、老婦人とバベットが出会ってからのターンがブツ切りにされているような印象を受けるけれど、実はちゃんと物語として成り立っていて、キッチリ伏線が貼られていたことに感心してしまった。

題名にもなっている晩餐会は大成功を収めたのだけど、この晩餐会は老姉妹の恋があってこそ…のものだった。

  • フィリパの恋 → バベットと老姉妹が出会うキッカケになった。
  • マーチーネの恋 → マーチーネを愛していた将軍が晩餐会の成功の鍵になった。

『バベットの晩餐会』の前半部では「題名と内容が合っていないのでは?」みたいな吉になったのだけど、フィリパの恋があったからこそバベットと出会い、マーチーネの恋があったからこそ、晩餐会を成功に導くことが出来ている。

スピード感こそ無いものの、最後にパズルのピースがバチッと合う快感を味わうことができた。『バベットの晩餐会』は原作小説があるようなので、原作小説も読んでみたいと思ている。

『バベットの晩餐会』は私に「原作も読んでみたい」と思わせてくれる素晴らしい映画だった。

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白い木蓮の花の下で
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