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非色 有吉佐和子 角川文庫

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『非色』は有吉佐和子作品の中で1、2位を争うほど大好きな作品。

『非色』の感想はワードプレスに引っ越す前の阿部寛のHP的なHTMLタイプのHP時代に感想を書いていたのだけれど、哀しいトラブルがあってデータを紛失している。

「有吉佐和子がお好きとのことですが『非色』は読まれていないんですか?」と質問を戴いたので改めて感想を書いておくことにする。

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非色

ザックリとこんな内容
  • 物語の舞台は戦後の東京。
  • 主人公の笑子は進駐軍のニグロ(黒人)専用のキャバレーで働いていた時に黒人男性と恋に落ちて結婚し、娘を授かる。
  • 夫はアメリカに帰国。笑子は日本で暮らすつもりだったが、ハーフの娘が差別されることでアメリカの夫の元へ。
  • 笑子は夫から「アメリカは自由と平等の国」と聞かされてきた笑子だったが、アメリカにも根深い人種差別がある事を思い知らされていく…。

アメリカの人種差別問題

題名の『非色』はタイトルの「色に非ず(あらず)」と言う意味。

日本人の笑子は黒人を夫に持つ事で「肌の色」について嫌と言うほど考えさせられていく。

『非色』には主人公以外に3人の戦争花嫁が登場する。

  • 笑子と同じく夫が黒人の女
  • 夫がイタリア系白人の女
  • 夫がプエルトリコ系の女

当然だけど、妻は全員日本人。黄色人種、白人、黒人が揃っていて、ついでに言うなら物語後半ではユダヤ系のアメリカ人の日本人妻も登場する。

私は主人公の笑子の視点で物語を読み進めていった。

笑子は日本にいる時から黒人が差別されている事には気がついていたけれど、白人の中にも差別されている人達がいる事を知らなかったため、アメリカに渡ってアメリカ社会の真実を知る。

私も笑子と同じくアメリカ人の中にそこまで細かく区分けされた差別感があるとは知らなかったので、とりあず「知識」として面白かった。

白人と言ってもイタリア系移民は低くみられるし、ユダヤ系もしかり。そしてプエルトリコ系の人達もアメリカ社会で酷い生活を強いられている。

そんな中で笑子は何度も何度も「色じゃない」と心の中で繰りかえす。

逞しく生きる女の姿

アメリカの人種差別について熱く書いてしまったけれど『非色』は人種差別問に真っ向から向き合った作品」ではあるけれど、それだけじゃない。

アメリカに渡って強く生きていく女の姿が最高なのだ。

主人公の笑子以外の女達もなんだかんだ言いながら、子を産み、育て、働きながら逞しく生きていく。

実は1人だけ逞しく生きることの出来なかった女性がいるのだけれど、彼女のエピソードが気になる方は、是非とも本を手に取って戴きたい。

理不尽な事ばかりの生活の中で、それでも考え、自問自答することをやめずに生きる笑子の姿は力強くも美しい。

物語の最後はこんな言葉で締めくくられている。

ああ、明日は私はサムを抱いてエンパイア・ステイト・ビルに登るのだ。

ここだけ読むと、なんてことのない一文のように思えるのだけど、笑子の人生を追ってくると「笑子さんカッケー!」って思ってしまうほど痺れる文章なのだ。

有吉佐和子と言うと『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『三婆』あたりが取り上げられることが多いのだけど、私はその中にこの『非色』をねじ込んでいきたい。

私にとって『非色』はそれくらい大好きで特別な作品。

「有吉佐和子、好きだけど読んだことないわ」って方は是非是非、読んで戴きたい。

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