李龍徳の作品を読むのはこれで3冊目。
初めて読んだ『死にたくなったら電話して』はイマイチ好きになれなかったのだけど、次に読んだ『報われない人間は永遠に報われない』がちょっと良かったので追いかける事を決めた作家さん。
読後感悪い系の話を書く人で吉村萬壱とイメージがかぶる感じだけど、吉村萬壱に較べると厨二病間の漂う作風で「ハマる人はハマるだろうなぁ」と密かに期待していた。
愛すること、理解すること、愛されること
- 謎の死(自殺)した後輩の妹に招かれて四人の男女が軽井沢の別荘に集まる。
- 会話劇的な雰囲気で、それぞれが自分の人生を語る。
感想
う~む。なんだか残念だ。今回の作品はイマイチどころか全く面白くなかった。
もう一組は恋人同士。後輩の死の真相を探るミステリなのかな…と思って読み進めたものの、ミステリでもなんでもなくて肩透かしを食らわされた気分になってしまった。
親子問題や恋愛問題、不妊症の話だの離婚や母性についてだのと、とにかく話題が雑多に詰め込まれていた印象を受けた。
彦摩呂風に言うなら「文学系の小説に使われがちなテーマを詰め合わせた幕の内弁当や~」って感じだった。
前作よりも申し訳ないけど劣化している気がする。
これがデビュー作ならまだ分かる。
「やりたい事あったけど、まとまらなかったんだね」と温かい気持ちで受け入れられたと思うのだけど、3作目でこれを出してくるのはちょっと…ねぇ。
そもそも男性作家が母性だの不妊症だのってテーマを書くに無理があると思う。
よほど自信と実力があるなら話は別だと思うのだけど、ちゃんと書ける作家さんは少ないのではなかろうか。
男性作家さんが書いた不妊症がテーマの作品で面白かったと感じたのは佐川光晴『ジャムの空壜』くらいだ。
男性が妊娠や出産を書いちゃ駄目だとは思わないけれど「書くならちゃんと書け!」とは思う。薄っぺらい物しか書けないのなら、書かない方が賢明だと思う。
出産、育児をテーマにするのは地雷だと思う。
もちろん、それで上手くやっている男性作家さんもいるし、私も感心した事があるけれど、付け焼き刃で太刀打ち出来る領域ではないと思う。
あと、最後に1つだけ書かせて欲しい。
スパゲティ茹でて食べるのは村上春樹に任せておけば良いのではなかろうか?
料理描写とかホントいらない。料理漫画なの? 料理描写しないと死ぬの?
いつの頃からオシャンティな日本人はパスタ茹でてワインを飲まねばならないようになったのか?
そろそろ、文学界隈はありきたりなオシャンティ献立から卒業しても良い頃合いだと思うのだけど。
気が向いたら4冊目も読むけれど、もしかしたらこれで打ち止めになるかも知れない。