朝比奈あすかの作品を読むのは何冊目だろう。
「大好きでハマっている」と言うほどではないのだけれど、手堅くて大外れが少ない作家さんだと思っている。この作品もまずまず面白かった。
それぞれタイプの違う5人の女性作家が主人公の短編集。作家が作家をテーマにして作品を描くなんてちょっと面白い。
みなさんの爆弾
- 女性小説家が主人公の短編小説集。
- 「初恋」「譲治のために」「メアリーとセッツ」「官能小説家の一日」「世界裏」「戦うなと彼らは言った」を収録
- 官能小説家からラノベ作家まで、様々な作家が登場する
- 読書好きの人な楽しく読めそうな予感!
女性小説家と言ってもジャンルは様々で純文学の作家もいれば、男性向の官能小説を書いている作家だったり、ラノベファンタジーを書いている作家だったり。
それぞれの作家は独立してして、まってく似ていないのに同じ空気感があるような気がした。
世相を反映しているな…と感じたのは「どの主人公もお金持ちではない」と言うところ。
読書離れが進む出版業界は年々厳しくなっていて、専業作家として食べていける人はひと握りだと言われるけれど、この本に出てくる作家達もバイトをしていたり、主婦として根本的な部分は夫に依存していたりする。
どの作品もそれなりに面白かったけれど、私が気に入ったはの中学時代の淡い恋を描いた『初恋』と言う作品。
女子校が舞台になっていて、私自身女子校出身なので共感出来る部分が多かったのだと思う。特に同性しかいない気楽さから主人公が伸び伸びと学校生活を謳歌していく姿は「そうそう。分かるわぁ~」と昔の事を懐かしく思い出してしまった。
初恋物のテンプレではあるのだけれど、昔の恋をそっと封印するラストも小説らしくて良いと思う。
「主人公=作者」ではない事は承知しているけれど、主人公達はそれぞれ作者を投影した部分があるのかな…なんて事を思ってしまった。
それぞれタイプは違っているのに、どこかアッケラカンとして芯の強いところが読んでいて気持ちが良い。
個人的にはかなり楽しめたのだけど、男性が読むとどうなのかな…とは思った。
物語的には取り立てて変わった要素がなくて「ビックリした」とか「泣けた」とか「意外だった」と言うような部分はあまりない。
どちらかと言うと読者が共感出来てこそ…なタイプの作品なので、男性よりも女性の方が楽しめるのではないかと思う。
朝比奈あすかの作品を読むのはこれで5冊目。「職人系の手堅い作家」と言うイメージがますます強くなった。次の作品も期待したい。