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砂上 桜木紫乃 角川書店

凄く面白かった。今年読んだ本の中で間違いなくベスト3に入るほどに。

人生に行き詰まった中年女性が作家デピューするまでの経緯を書いた物語。ネタバレ全開で感想を書くのでネタバレが苦手な方はご遠慮ください。

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砂上

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空が色をなくした冬の北海道・江別。柊令央は、ビストロ勤務で得る数万円の月収と、元夫から振り込まれる慰謝料で細々と暮らしていた。

いつか作家になりたい。そう思ってきたものの、夢に近づく日はこないまま、気づけば四十代に突入していた。

ある日、令央の前に一人の編集者が現れる。「あなた今後、なにがしたいんですか」。責めるように問う小川乙三との出会いを機に、令央は母が墓場へと持っていったある秘密を書く決心をする。

だがそれは、母親との暮らしを、そして他人任せだった自分のこれまでを直視する日々の始まりだった。自分は母親の人生を肯定できるのか。

アマゾンより引用

感想

主人公はシングルマザーに育てられ結婚した主婦の傍ら小説を書いて投稿していたのだけど夫の浮気により離婚。

母親の家に転がり込んで幼馴染の経営するビストロでアルバイトをしながら投稿小説を書いて暮らしているところに母親が病死。物語はここからスタートする。

一言で言うなら主人公は真面目系クズと言っても過言ではない。

たぶん桜木紫乃は主人公が「嫌な女」「ムカつく女」と思われることを恐れていないのだと思う。

「夫の浮気が原因で離婚した女性」を主人公にする場合、主人公は悲劇のヒロインになりがちなのだけど、そうじゃないところが素晴らしい。

実はこの主人公。妹がいるのだけれど、その妹は高校生の時に自分が産んだ子で、母親の子どもとして育ててもらっていた…と言う経緯がある。育児も責任も親に丸投げして、小説を書きながら自分探しをする中年女性……まったくもってクズ過ぎる。

主人公はある女性編集者から、文学賞に投稿した小説を書き直して夜に出さないかと持ちかけられる。この女性編集者がまた面白い。冷徹と言うのかなんと言うか。

主人公に何度となくダメ出しして作品の書き直しを命じる。ちなみに作品は主人公自身の体験を小説にしたもので、主人公は小説を書き直していくことで、母親と妹(本当は主人公が産んだ娘)、そして自分自身について考え直すことになる。

主人公が自分の人生を見つめ直しながら小説と向き合っていく過程が最高に面白かった。

途中「あれ? これって小説なの? 主人公の体験なの?」と作中作なのか、主人公の体験なのかが分かり難い部分もあったけれど、そこは「あえて」の事なのかな…と思った。

編集者に何度も原稿を突き返されてもその都度、黙々と改稿していく主人公に「作家ってこういう仕事なんだなぁ」と感心させられた。

主人公は地味で真面目そうな女性なのだけど「ちょ!! それってどうなの?」と思うほど自分勝手な部分があるのだけれど「小説家ってそんなもの」と思えばなんて事ない感じ。

あえてイチャモンを付けるなら、主人公に連絡してきた女性編集者のキャラクターがあまりにも出来過ぎと言うか、都合が良い過ぎるってこと。

颯爽と現れて主人公を泥沼から引っ張り上げてくれる訳だけど「王子様じゃないんだからさ…」って気持ちになってしまった。

桜木紫乃は女の情念を描かせると本当に上手いなぁ。面白くてイッキ読みしてしまった。

どうやら私は桜木紫乃と相性が良いようだ。

前回読んだ『裸の華』も良かったけれど、この作品も気に入った。新作が出るのを今から楽しみに待とうと思う。

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白い木蓮の花の下で
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