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映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』感想。

3.0
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『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』は2017年に公開されたアメリカの伝記映画。原作はケネス・スラウェンスキーの『サリンジャー 生涯91年の真実』

サリンジャーと言えば『ライ麦畑でつかまえて』を思い浮かべる人が多いと思うのだけど、実は私。『ライ麦畑でつかまえて』を読んだことがない。私は本好き人間だけど日本の小説が好きで外国文化には疎いのだ。なのでサリンジャーは文学史的な意味で知っているものの、作品にしても人となりにしても全く知らない状態で映画を視聴した。

日本でもサリンジャーが好きな人は多いし、例えば村上春樹なんかもサリンジャーに心酔していたな…くらいの認識はあったけれど『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』を観て、熱烈なファンがいるのも納得できた。

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ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー
Rebel in the Rye
監督 ダニー・ストロング(英語版)
脚本 ダニー・ストロング
原作 ケネス・スラウェンスキー
『サリンジャー 生涯91年の真実』(晶文社)
出演者 ニコラス・ホルト
ゾーイ・ドゥイッチ
ケヴィン・スペイシー
サラ・ポールソン
音楽 ベアー・マクレアリー(英語版)
公開 アメリカ合衆国の旗 2017年9月8日
日本の旗 2019年1月18日

ざっくりとこんな内容

物語の舞台は1930年代のニューヨーク。サリンジャーは小説家になりたいと切望する高校生、しかし、食品業界で働く父は反対し、ビジネスの世界へ行くことを勧める。一方、母親はサリンジャーの夢を応援するスタンスで名門コロンビア大学へ行くことを勧めね。

そして数年後。大学中退を繰り返すサリンジャーはコロンビア大学で講義を受け文芸誌の編集者でもあるバーネット教授と面談してアドバイスを受ける。

サリンジャーはニューヨーカー誌に小説を投稿するが不採用となる。バーネット教授から「拒絶にどう対応するかも小説家の仕事だ」と言われるがサリンジャーはいくら小説を書いても、採用されることはなかった。

ある日、バーネット教授ははサリンジャーに最初の小説が自分の文芸誌に発表されたことを知らせまる。サリンジャーはお金をもらい、酒で祝い、ウーナという美しい女性とダンスに興じる。しかし、その後、サリンジャーの作品は発表されず、ウーナとの恋愛も実ることはなかた。

だが、サリンジャーはウーナとの恋愛体験をもとに、ホールデンとサリー(「ライ麦畑でつかまえて」の主人公)の短編を書き、その小説かニューヨーカー誌に掲載される。

バーネット教授はサリンジャーが生み出したホールデンのキャラクターが気に入り「長編小説を書けば?」とサリンジャーに勧める。

そんな中、第二次世界大戦が勃発。サリンジャーは陸軍入隊する。陸軍でトレーニングを受けるサリンジャーは死と作品について考え、そして戦争の最中にも心の中でホールデンの物語を脳内で綴っていった。

1946年、戦争はアメリカの勝利に終わりサリンジャーは自宅に帰り、家族にシルヴィアという女性と結婚したことを伝える。

その後のサリンジャーは、戦争の後遺症に襲われ酒に溺れ、離婚を考えるようになる。その頃、サリンジャーはインド系の僧侶の教えに傾倒していく。サリンジャーは瞑想し、悩みを克服しながら執筆を続け、紆余曲折を経て『ライ麦畑でつかまえて』をかき上げる。

『ライ麦畑でつかまえて』は大ベストセラーとなるのだが…

サリンジャーの作品を知らなくてもヘーキヘーキ

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』はサリンジャーの作品を知らなくても充分楽しむことの出来る作品だと身をもって体験した。サリンジャーの作品を1つも読んでいない私が言うのだから間違いない。

そして、私がサリンジャーの作品に惹かれなかった理由も分かった。私の好きな方向性と違うのだ。

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』の前半は「お金持ちのチャラい系お坊ちゃんのワガママ物語」って感じ。しかもサリンジャーはありがちな文学青年って感じではなく、お金持ちのウェイ系。そりゃあ、私の心に刺さらないはずだわ。主人公のサリンジャーは私の好みの対局に存在するタイプの青年だった。

天才はスゲーな!!

サリンジャーって作家は私の好みの対局にあるタイプの作家だったけれど、それでも「天才ってスゲーな!」とは思った。

これはサリンジャーに限ったことではないけれど、才能溢れる芸術家って、一般人とは違う物を持っている。なんかこぅ…極端。

『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』の滑り出しは「金持ちで苦労知らずのバカ坊っちゃんの話」だけど、作家として活動しはじめてからのサリンジャーはクレイジーだった。

  • 苦難の末はじめて作品が認められる流れ→分かる
  • 戦争中も脳内で物語を綴るターン→分かる
  • 戦争の後遺症(PTSD)に悩む→分かる
  • インド系僧侶に心酔して精神修養→?

カルト…と言い切るには相応しくはないのかも知れないけれど、インド系僧侶のカルトな教えなハマって修行をはじめるあたりから、進む方向が怪しなってくる。傍で見ているとクレイジーなのだけど、その影響で小説はどんどん軌道に乗っていくのだから、サリンジャーにとっては必要な過程だったのだと思う。

小説家として素晴らしくても…

サリンジャーは今でも熱狂的なファンがいる作家で確かに小説家としては素晴らしい人なのだろうけれど、家庭人としてはクズだった。

素晴らしい小説を生み出す作家だからった人間として優れている訳ではない…ってことは、よく知られていることだけど、サリンジャーもそのタイプ。「自分と自分の作品さえ良ければOK」と言う超利己的な人間だった。

作家としては正しい姿だと思うのだけど、身内になるのは遠慮したいところ。

村上春樹とサリンジャー

村上春樹はサリンジャーを偏愛している事で知られているけれど『ライ麦畑の反逆児 人はサリンジャー』を観て「なるほどなぁ…」と納得してしまった。

村上春樹とサリンジャーってなんか似ている。

サリンジャーが大好きな村上春樹が自分をサリンジャーに寄せていったのかも知れないけれど、編集者とか人間が大嫌いで信用していない…みたいなところは共通していた。

サリンジャーは小説が爆発的に売れてから、田舎に引篭って隠遁生活を送るのだけど、もしかしたら村上春樹はサリンジャーの行き方を追ってるのかな…なんてことを思ったりした。

私はサリンジャーも彼の作品も知らない状態で『ライ麦畑の反逆児 人はサリンジャー』を観たけれど、サリンジャーが好きな人が観れば違った感想が生まれてくると思う。

『ライ麦畑の反逆児 人はサリンジャー』は「最高に面白い作品だった」とまでは言わないけれど、手堅く楽しめる秀作だと思う。

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