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映画『里見八犬伝』感想。

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『里見八犬伝』はアラフィフ世代なら覚えているだろう角川映画全盛期に作られた名作。

薬師丸ひろ子、真田広之が出演していて、私は小学生の時に親にねだって連れて行ったもらった。

久しぶりにケーブルテレビで放送されていたので「ん~。流行ってたのは知ってるけど観たことないな」と言う夫にどうしても観せたくて夫婦で視聴した。

『里見八犬伝』はアイドル映画と思っている人が多いのだけど、ヲタク的には見逃せない要素が山盛りに詰め込まれている。

私の個人的な意見だけど『里見八犬伝』はゲームクリエイター達にも影響を与えたのではないかと推察する。

実際、渋々付き合ってくれて夫も「このシチュエーションって、まるで…」と往年の名作ゲームに思いを馳せていた。

古い映画ということでネタバレ全開仕様です。ネタバレNGの方はご遠慮ください。

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里見八犬伝

里見八犬伝
Legend of the Eight Samurai
監督深作欣二
脚本鎌田敏夫
深作欣二
原作鎌田敏夫 『新・里見八犬伝』
製作角川春樹
出演者薬師丸ひろ子
真田広之
松坂慶子
千葉真一
音楽NOBODY
主題歌ジョン・オバニオン
「里見八犬伝」
「八剣士のテーマ (White Light)」

あらすじ

角川映画の『里見八犬伝』は、滝沢馬琴の書いた『南総里見八犬伝』をベースにしているけれど、基本的には『南総里見八犬伝』とは全く別物の和風ファンタジーだと理解して戴きたい。『南総里見八犬伝』から入ってしまうと「コレジャナイ」ってなること請け合い。

かつて蟇田領主、蟇田定包(ひきたさだかね)は毒婦、玉梓 (たまづさ)の色香に迷い、酒池肉林と暴虐の限りを尽くしていた。

苦しむ領民を救うべく、里見義実(さとみよしざね)は、玉梓を討ちと取る。しかし、玉梓は最期に里見家へ呪いの言葉を遺す。

玉梓の呪いが効いたのか里見家は隣国の軍勢に囲まれ落城の危機に。

力尽きた義実は飼い犬の八房(やつふさ)に「敵将の首を討ちとれば娘の伏姫(ふせひめ)を嫁につかわす」と呟きく。

そして、その夜…八房は見事に敵将の首を討ち取った。

伏姫は父である義実と八房との約束を守り、八房と共に山へ入る。しかし、八房から伏姫を取り戻そうとした義実の軍の銃に撃たれて伏姫死亡。

しかし伏姫の死の直前、伏姫の体から仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉が飛び散った。

伏姫は死の間際に「100年後、8つの玉と共に8人の剣士が集い、里見家を救う」と予言する。

そして100年後…

呪いの言葉を残して死んだはずの玉梓は息子の素藤と共に妖怪として復活。妖怪軍団を形成し、里見家を攻め滅ぼす。

辛うじて落ち延びた里見家の静姫は伏姫が予言した八人の剣士を探し出し、共に玉梓を倒し里見家を復興させる事を誓う。

キャストと人物設定

人物設定は滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』とは大違いなので要注意。かなりファンタジー&ヲタク寄り。

味方

  • 静姫 – 薬師丸ひろ子

八剣士

  • 犬江親兵衛(仁) – 真田広之(大鎌の二刀流を使う元農民。実は玉梓の息子)
  • 犬坂毛野(礼) – 志穂美悦子(女田楽師。男と女、2つの性を持つ。周囲から疎んじられて生きてきた)
  • 犬村大角(義) – 寺田農(山伏姿で学者肌な剣士。親孝行で真面目な性格)
  • 犬塚信乃(孝) – 京本政樹(女性名を持つ剣士。義理の妹の浜路を男として愛している)
  • 犬田小文吾(悌) – 苅谷俊介(力持ちの剣士。荘助とは義兄弟の契りを交わしている)
  • 犬川荘助(智) – 福原拓也(成人だが、男児の姿をした剣士)
  • 犬飼現八(信) – 大葉健二(敵方の武将。静姫の笛の力で正義の心を取り戻す)
  • 犬山道節(忠) – 千葉真一(最年長でリーダー格の剣士。実は余命1ヶ月。ナイスミドル枠)

敵方

  • 玉梓 – 夏木マリ(実は犬江親兵衛の母)
  • 蟇田素藤 – 目黒祐樹
  • 妖之介 – 萩原流行(犬坂毛野が好き)
  • 船虫 – ヨネヤマ・ママコ
  • 浜路 – 岡田奈々(血の繋がらない兄の犬塚信乃が好き)

盛りだくさんの練り込んだ設定

人物設定にサラッと目を通して戴けば分かって戴けるかと思うのだけど、おおよそヲタクが好きそうな設定がギュギュッと詰め込まれている。

  • 運命に導かれし剣士
  • 主人公カップルは敵味方
  • 敵方と味方に数組の恋人
  • 両性具有のキャラ
  • 血の繋がらない兄妹の恋
  • 実は余命1ヶ月

……1キャラ、あるはい1カップルだけで物語が1つ作れる勢いでキャラ設定が濃い。

そのエピソードをわずか2時間ちょいの映画に突っこんできたのだから、とりあえず飽きる暇がない。

ただし、そのキャラ設定は映画内で全て生かされていた…とは言い難い。詰め込み過ぎて普通に観ていたら、よく分からないかと思う。

私は子どもの頃、映画を観た後でノベライズを読んで情報を補完したし、初めて視聴した夫には、夫が分からないと言う部分を丁寧に解説した。

映像は今みると微妙かも

「実写よりもアニメ化した方がいいんじゃないかな?」と思ってしまうほどの超ファンタジー設定をあの時代に実写化した事に拍手したい。

現在の映像技術で制作したら相当凄いことになったと思うのだけど、35年以上昔の映画なので、正直言ってB級映画感はあるのは否定出来ない。

当時の一般的な特撮映画がどんな感じだったのかがよく分からないので、なんとも言い難いのだけど、映像のクオリティについてはそこまで突っ込まないで戴きたい。

何しろ『里見八犬伝』が作られたのは35年以上も前のこと。インターネットやパソコンなんてなかった時代の作品なのだ。今のようなCG技術も無ければコンピューター制御で何から何まで動かせる時代の作品じゃない。

例えば。静姫が大蛇に絡まれる場面は薬師丸ひろ子が大蛇のハリボテを付けてジタバタ1人で暴れているところを撮影したとのこと。

今見るとB級かも知れないけれど、当時出来る技術を駆使して、よく作り込んでいるんじゃないかな…と思う。

絶妙なキャスティング

「映像的にイマイチと言うけど、じゃあ『里見八犬伝』のどこが面白かったんだい?」って話だけど、『里見八犬伝』の面白さは設定と脚本の良さにあると思っている。

そして何よりキャスティングの絶妙さ!

まずは薬師丸ひろ子。とりあえず可愛い。とにかく可愛い。

正直、軽く演技が棒っぽいのだけど、声の可愛さと見た目の可愛さでガッツリとカバー出来ている。当時、薬師丸ひろ子が大人気だったのもなるほど納得。

真田広之はアクションが凄かった。流石はJAC(ジャパンアクションクラブ)仕込みの動きだ。

細マッチョの真田広之が『ミッション・インポッシブル』のトム・クルーズ並の見事なアクションを披露してくれている。真田広之のアクションは本物だと思う。

脇を固める俳優陣も文句なしに上手かった。特に夏木マリの妖女っぷり!

夏木マリの熟女の色気は圧倒的。ヌードも美しくて最高だった。

京本政樹のイケメンっぷりもそうだし、志穂美悦子、岡田奈々も美しい。千葉真一のダンディっぷりにも最高に良い。

薬師丸ひろ子の濡れ場

ヌードと言えば、薬師丸ひろ子の濡れ場についても書いておきたい。

私が子どもの頃に観た時は「エッチなシーンがあったし、なんだかよく分からないけどエッチシーンが長かったな」くらいにしか覚えていないのだけど、大人になった今みると、なかなか興味深い部分が多かった。

濡れ場と言っても薬師丸ひろ子の顔のアップしか映されておらず、ドラクエの「昨夜はお楽しみでしたね」くらいの健全さだった。

今にして思うに…あれは当時の人気のアイドル女優が出来るギリギリの範囲だったのだろうなぁ。

上手いこと撮影したものだと、妙なところで感心してしまった。薬師丸ひろ子が最中に目をつぶっているのも初々しい感じで良き。慎み深い昭和の微エロって感じだった。

圧巻の決戦シーン

実のところ映画前半部はちょっとテンポが悪いのだけど、悪の居城に突入する決戦シーンは最高に盛り上がる。アクションが凄いし、役者さん達全員本当によく動く。

そして「仲間が1人ずつ死んでいく」と言う流れは控えめに言って最高。

大男の文吾と見た目が子どもの荘助が2人で落下する天井を支えて石化する場面はゲーマーなら誰でもファイナルファンタジー4でパロムとポロムが石化する場面を連想すると思う。

ファイナルファンタジーが里見八犬伝をパクった…とは言わないけれど、里見八犬伝の突入から決戦までの場面は、それ以降のヲタク文化に大きな影響を与えていると思う。

ちなみに夫は「全般的に『俺の屍を越えてゆけ』の雰囲気とかぶるよな」と言っていた。

『里見八犬伝』のこの設定(場面)は、あのゲームの設定(場面)と似ている…と言い出したらキリがないくらい『里見八犬伝』にはヲタク的な要素がみっしりと詰め込まれているのだ。

ほぼ全滅なのにハッピーエンド

さて。仲間達の屍を乗り越えたヒロインカップル、薬師丸ひろ子と真田広之は悪者を倒して、平和が戻ってくる。

……とは言うものの、ほぼ全滅ED。まぁ酷い。

そんな酷い状況をどうやって締めくくるんだろう…って話だけど、これがまた上手いことまとめている。

真田広之は薬師丸ひろ子を親戚の城に送り届け、2人は別々の人生を歩む…と見せかけて、最後の最後で薬師丸ひろ子が城を出奔。

愛する男と共に生きていく道を選ぶ。

そして愛を貫く2人に対してあの世から八犬士達が背中を押してくれる…ってところも泣ける。

ラストシーンで薬師丸ひろ子と真田広之は荒野を馬に乗って走るのだけど、なんと馬で並走して手を繋ぐ…と言うサービスっぷり。

「馬に乗るのも大変だったろうに、よく手を繋いで馬を走らせたよね」って話だ。

薬師丸ひろ子も真田広之も最高に良い笑顔なのだけど、あれって「やったー!手つなぎ乗馬成功したー!」って笑顔だったんじゃないかと密かに思っている。

もはや「クララが立ったー!」って勢い。映像に喜びに溢れている。

「よくまぁ…アイドル女優を使って、あそこまでやらせたよね」と感心してしまった。

35年以上ぶりに視聴したけど満足のいく面白さだった。

『劇団☆新感線』の舞台が好きな人なら今でも楽しめる思うので、興味のある方は是非チャレンジして戴きたい。

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白い木蓮の花の下で
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