村田沙耶香は『コンビニ人間』で芥川賞を受賞する前から大好きだったのだけど、最近どうも「村田さん、こんなので大丈夫なんですか?」と心配になってしまう作品が多い。
今回読んだ『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は各所で絶賛されていて、出版社もイケイケドンドンな感じで推していたので、かえって腰が引けてしまって今まで読まずに来たのだけれど、私の好みではなく、正直ネタだけが独り歩きしている感じがした。
今回も前回読んだ『変半身』同様、否定的な感想になってしまうので、村田沙耶香が好きな方は読まない方が良いかもです。
丸の内魔法少女ミラクリーナ
- 表題作を含む4編が収録された短編集。
- 表題作『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は36歳のOLが主人公。小学校時代からの妄想ごっこを貫いて、いまだ魔法少女ごっこに興じている。
- 『無性教室』は高校時代は性別を公開せず「どの性にも属さない人間」として生きなければいけない…て言う近未来的設定。
- 4編と「少女」「性」がテーマになっている。
感想
前回読んだ『変半身』にしても、今回の『丸の内魔法少女ミラクリーナ』にしても作品としては好きになれなかったものの、村田沙耶香を嫌いになった訳じゃない…ってことは先に書いておきたい。
さて。この『丸の内魔法少女ミラクリーナ』だけども36歳の丸の内OLが小学生の頃から続けてきた「魔法少女ごっこ」をいまだに続けている…と言う設定。親友も同じく魔法少女で定期的に会っては密かに活動している。
「妄想を大事にして生きている人」って人に言わないだけで世の中には案外多いのではないかと思う。
ちなみに『丸の内魔法少女ミラクリーナ』の主体は魔法少女云々ではあるのだけれど「親友がモラハラ彼氏と別れる物語」でもあった。モラハラ彼氏を突っ込んできたところで「ずっと貫いてきた妄想」の設定が薄くなってしまっているし「あ~。こういうタイプの男性っているよね~」と軽い仕上がりになってしまっていた。
『無性教室』については、ジェンダーフリーがを進めようとしている今の風潮にはバッチリ合うものの、最終的にはヘテロセクシュアル同士が普通にセックスをする話に落ち着いていて、せっかくの設定が生かし切れていないと思った。
他2編についても、アイデア的には面白かったけれど、どうにも小手先で書かれている気がして夢中になることが出来なかった。
なんだろうなぁ…4作品とも「熱」のようなものが感じられなかったのだ。
例えば『殺人出産』などは、荒っぽいところがあるものの、作者の熱が伝わってきて唐突な妄想世界に引き込むだけの力があった。だけど『丸の内魔法少女ミラクリーナ』に収録された4作品には、その熱と力が感じられなかったのだ。
……なんだか、もったいない気がする。
合作とか短編とかが悪いとは言わないけれど、ファンとしてはじっくり取り組んで書かれた長編小説を読ませて戴きたい。今回はイマイチだったけれど、次の作品に期待。