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淳之介さんのこと 宮城まり子 文春文庫

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宮城まり子のような魅力的な女性から「大好き」とか「愛しています」と言われたら「ごめんなさい」と言える人なんて、いるんだろうか?

なんて可愛らしい女性なんだろうかと思った。こういう人と相思相愛になれたら毎日が楽しいだろうなぁ……と。

長い長い恋文を読んだような印象を受けた。恋文といっても宛先は天国なのだけれど。

個人的な感想を言うならば、こういうタイプの女性にはなんだか憧れちゃうし、ものすごく羨ましく思う。

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淳之介さんのこと

出会いからその死まで、三十七年にわたり、いつも傍らで作家・吉行淳之介を見つめてきた著者が、思い出すままにつづる作家の生活

アマゾンより引用

感想

行間に「大好き」と「愛しいています」がギッシリと詰め込まれたような感じだった。

私としては作家、吉行淳之介の違った顔を拝むのを楽しみにしていたのだが、宮城まり子は文章のプロではないだけに、そのあたりは、ちょっとガッカリだった。

吉行淳之介の側面がチラチラと見える部分もあったのだが、あまりにも宮城まり子が恋人のことを好きだったせいか、何を読んでも「そっかぁ。そんなに好きだったんだねぇ」というところに終始してしまった。

こういう、ひたむきな愛を綴った文章は読んでいても楽しくて良い。

私は宮城まり子のことを「なんて可愛いらしい女性なのだろう」と思った訳だが、少し意地の悪い見方でもってみると、2人の関係は、俗に言うところの「愛人関係」だったからそういう愛が貫けたのだと思う。

もしも吉行淳之介と宮城まり子夫婦だったら、あぁいう風にはいかなかった気がする。

子供がいて、親戚づきあいをして「妻」だとか「母」だとかいう立場になれば、あんなノリではやっていけなかっただろうと思うのだ。

吉行淳之介の晩年に「子供を生まなくて良かった。もしも子供がいたら……」語った宮城まり子の想像は、まったくもって頷ける。

事情はどうあれ、女房と子供を持ちながら可愛らしい愛人と暮らしていた吉行淳之介って人は、ズルイ男だよなぁ……と思った。

吉行淳之介を知る作家さん達の文章を読むだに、ダンディで女性にモテて魅力的な人だったそうだが、人間としては「酷い人だなぁ」と思わずにはいられない。

批難するとか、そういうつもりはないのだけれど。

宮城まり子は昔風の嫌な言葉で言うなら作者は「お妾さん」とか「2号さん」という感じだったのだろうなぁ。

「入籍」という形にに、こだわりつつ、恋人が好きだから「もういいや」と思う気持ちは、ちょっと切なかった。たくさん惚れた方が負け……ってのは本当だと思う。

私は、なにかの折に触れて「私は不倫は嫌い」だとか「なんだかんだ言って賛同できないんだな」なんてことを日記だの本の感想だのに書いているし、今だってその考えは変わらない。

だけど宮城まり子のような、ひたむきな女性は理屈を超えて好きだと思った。

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