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飛族 村田喜代子 文藝春秋

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村田喜代子は前回読んだ『エリザベスの友達』がイマイチだったので、実のところ「そろそろ追いかけるのも潮時かな…」と思っていたけど、今回読んだ『飛族』はかなり良かった。

今回の『飛族』も『エリザベスの友達』同様、高齢女性が主人公で独特の世界観はあるけれど、ぶっ飛び具合がほどほどなのと「離島の生活」と言う特殊設定のおかげで、意外とアッサリ物語の中に入ることが出来た。

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飛族 村田喜代子

ザックリとこんな作品
  • 『文學界』連載を単行本化した作品。
  • 物語の舞台は朝鮮との国境近くに位置する養生島。
  • 主人公は老女2人。92歳のイオと、その海女友達で88歳のソメ子。
  • 大分に嫁いだイオの娘のウミ子が狂言回し役。

離島が舞台になっているので、離島の生活を知らない人間からすると「離島での生活」に驚かされた。

老女達の生活は1ヶ月2万円の年金があれば、半自給自足で暮らしが成り立つ。こんな風に書くと「清貧の生活って素敵」みたいに思うかも知れないけれど、老女2人のためだけに島にインフラ整備が必要になる。

例えば、船を動かすガソリン代だけで年間2000万円。離島の生活は浪漫だけではなり立たないものらしい。

離島の現実を知ると「たった2人のために、そんなにお金をかける必要があるの?」と思ってしまう訳だけど、日本の領土を守るためにも「島に人が暮らしている」と言う事実が大切とのこと。なんだか色々と考えさせられてしまった。

題名になっている『飛族』と言う言葉は老女達は崖の上の畑で鳥踊りの練習をする様子から来ている。海で死んだ人の魂は海鳥になると伝えられていて、仏教でもキリスト教でもない島独特の風習や言い伝えの中で老女達は生活している。

私はずっと大阪で暮らしていて「田舎では暮らせない」と思っている。
亡くなった曾祖母は鹿児島の山奥に住んでいたし、夫の祖母も和歌山の山奥にいたので、田舎の生活に触れた事はあるけれど、だからこそ余計に「田舎では暮らせない」と思ってしまうのかも知れない。
一般的に田舎不自由で暮らし難いと言われているけれど、この作品に登場する老女達は健やかに暮らしているように思えた。
実際、私の亡くなった曾祖母は95歳まで元気に暮らしていたし、夫の祖母も100歳まで畑仕事をしていた。都会で不健康に暮らして病院通いをしながら長生きする老人よりも、田舎で仕事をしながら気ままに暮らしている老人の方が幸せなのかも知れない。
この作品はあらすじがあるようで、実のところ最初から最後までふんわりしていて、ふんわりしたまま終わってしまう。
  • 離島に2人の老女が暮らしていました。
  • 老女達は魚を獲ったり、鳥踊りをしたりして、気ままに暮らしていましたとさ。
  • おしまい。

……細かいエピソードは色々あるけれど、あらすじを説明すると3行で終わってしまう。

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