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嘘 Love Lies 村山由佳 新潮社

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なんだか、ちょっとビックリしてしまった。村山由佳はこんな作品も書けるんだ!

私は村山由佳と言うと『天使の卵』を真っ先に思い浮かべてしまう。

そう言えばWEBに感想を上げていないけれど、発売当時はなんだかんだで話題になっていたように記憶している。

しかし当時は「なんか甘ったるくて好みじゃないなぁ」と完全にスルーしていた。しかし、今にして思えば若い女性向けの恋愛小説の流れを作った作品なのかな…って気がする。

そう言えば『天使の卵』以降は似たり寄ったりの恋愛小説がウジャウジャ登場したもの。

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嘘 Love Lies

ザックリとこんな内容
  • 秀俊、美月、亮介、陽菜乃の4人は仲のいい友達グループだった。
  • しかしある事件が4人の人生を狂わせてしまう。
  • 青春小説からのハードボイルドモードへの突入。そして…

感想

この作品も恋愛小説ではあるけれど、あえてジャンル分けするならノアール小説になると思う。

東野圭吾の『白夜行』が好きな人なら楽しめる予感。

思春期から繋がる恋愛とミステリ要素が合わさって読み応えのある作品に仕上がっている。ミステリ要素と言っても謎解き系ではないので、ミステリが苦手な人だも大丈夫。

感想を書くにあたって難しいのは「どこまでネタバレしてもいいのか」と言うこと。

この作品の場合、ネタバレを書いてしまうと全く面白くないタイプなので、あれこれ書いた上で感想を書きたいのだけど今回は伏せて書くことにする。

物語は仲の良い4人組の男女グループを中心に進んでいく。

男の子が2人、女の子が2人。それぞれ性格も境遇も全く違っている。中学2年の夏に彼らは不幸な事件に遭遇する。その事件をキッカケに彼らの人生は大きく変わる。

中学2年生から大人になってからも事件の影は彼らをずっとついて回る。子どもが酷い目に合う話だし、ヤクザと暴力の世界が装入されるので苦手な人は読まない方が良いと思う。私はグイグイ読んじゃった派。結構面白かった。

残念だったのはヤクザの世界の描き方が生温くて女性的だった…って事。

こう言う世界はハードボイルドが得意な男性作家さんの領分だと思う。残念ながら作者の作風と全く合っていない。

物語自体は面白いので残念でならない。なんと言うのかな…ヤクザがヤクザっぽくないのだ。「ヤクザ風」とでも言えば良いのだろうか。

ノアール小説を書こうとするならヤクザは丁度良い設定なのだと思うのだけど、嘘っぽくてハマれなかったのだ。

ただ人物描写は素晴らしい。特にヒロイン達は内面までしっかり書き込まれていて「ああ…こんな子いるよねぇ」と切なくなってしまった。

主要人物の4人はやってしまった事からすると「いい人」とは言い難いのだけど、全員悪い子じゃない…言うか本質的には良い子なのが読んでいてとても辛かった。様々な事を乗り越えて辿り着いたラストシーンはしみじみと哀しい。

「最高に面白かった」とは言えないけれど、作者の今までにない作品を読ませてもらったと言う意味では評価したいし、次の作品も楽しみにしている。

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