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インドラネット 桐野夏生 KADOKAWA

久しぶりの桐野夏生作品。題名になっている『インドラネット』とは仏教用語のインドラの網のこと。

インドラの網とはインドラ(帝釈天)の宮殿にかかる網のこと。網の結び目にそれぞれに宝珠がついていて、その一つひとつが他の一切の宝珠を映し出す。読書好きの方ならインドラの網と言うと宮沢賢治の作品を思い浮かべるかも知れない。

桐野夏生らしい勢いのある作品で「内容は無いよう」とも取れる内容だけど、ページを繰る手が止まらない面白さだった。

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インドラネット

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ザックリとこんな内容
  • 主人公、八目晃(やつめあきら)は平凡な顔、運動神経は鈍く、勉強も得意ではない。大人になってからは非正規雇用で給与も安く、ゲームしか夢中になれない無為な生活を送っていた。
  • 晃の輝かしい思い出は高校の同級生で、カリスマ性を持つ野々宮空知と、美貌の姉妹と親しく付き合ったことだった。
  • しかしある日、空知達の父親が亡くなった事を知り、葬儀に参列する。そして空知が、カンボジアで消息を絶ったことを知らさせ、ある人物から空知兄弟を探して欲しいと依頼を受け、カンボジアへ旅立つ。

感想

桐野夏生の作品はリアルを大事にした『OUT』のような作品と、リアル日本人を描きつつもどこか、ブチ切れ感のある『東京島』のような作品があるけれど『インドラネット』は『東京島』の系列に分類される。

主人公の晃ははどこにでもいそうなパッとしない独身男性。晃は特に何が出来る…と言う訳でもなく、そうかと言ってクズと言う訳でもない。非正規雇用で働きながら鬱々と暮らしている。

そんな晃が突然、仕事を辞めて元親友(相手がどう思っていたかは不明)とその妹達を探す旅に出る。行き先はカンボジア。資金が潤沢にある訳ではなく、バックパッカーとしての旅だ。

『インドラネット』はバックパッカーを経験したことのない人なら楽しめるかも知れないけれど、もしかしたらバックパッカーを経験した人が読むとムカつくかも知れない。と言うのも、晃はそれにしても不用意な人間で、カンボジアでは人に騙されたり、人に助けられたりする。

バックパッカーをしたことのない私にとって、晃の旅路は面白かった。私はこの先、バックパッカー的な旅をすることはないだろうから「自分の経験しないだろうこと」は魅力的だったのだ。

さて。肝心の親友探しなのだけど想像以上に複雑な物語だった。カンボジアと言う国の特性を生かしつつ、猛烈にぶっ飛んだ設定なので、カンボジアのことを深く知っていたり、リアルを求める人からすると、ムカつくかも知れない。だけど、私は物語の展開がいちいち予想外で楽しむことができた。

少し残念に思ったのは主人公が空知に固執する理由が弱過ぎる…ってこと。

男同士の関係を深い部分まで描き切れていないため、ラストへの流れは唐突な気がしたし「そこまでやるか?」みたいな気持ちになってしまった。この辺りの描写については高村薫の方が上手な気がする。『李歐』くらい、しっかり書いてくれてたらのめり込んでいたかも知れない。

軽く不満はあるものの、それはそれとして最後まで面白く読めたので満足している。

季節感のある作品ではないけれど、暑い国での物語なだけに気だるい夏の休日なんかに読むと良いんじゃないかな…と思う。

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