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夜の谷を行く 桐野夏生 文藝春秋

あさま山荘事件事件に関わった女性の後半生を描いた物語。

あさま山荘事件は私が生まれた1972年に起こっている。私は母から「白蓮がお腹にいる時にテレビでずっとあさま山荘事件の映像を見ていた」と言う話を聞かされた育った。

しかし私はあさま山荘事件についても連合赤軍についても興味が無くて、連合赤軍については小池真理子の『恋』を読んでから、ちょろりとウィキペディア等で調べた程度だ。

あさま山荘事件とは?
1972年2月19日、日本の新左翼組織連合赤軍のメンバー5人が、管理人の妻(当時31歳)を人質に浅間山荘に立てこもった。
山荘を包囲した警視庁機動隊及び長野県警察機動隊が人質救出作戦を行うが難航し、死者3名(うち機動隊員2名、民間人1名)、重軽傷者27名(うち機動隊員26名、報道関係者1名)を出した。
10日目の2月28日に部隊が強行突入し、人質を無事救出、犯人5名は全員逮捕された。
Wikipediaより引用
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夜の谷を行く

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ヒロインはあさま山荘事件に関わり、出所後は塾講師をしながら自分の過去がバレないよう息を潜めるようにして生きてきた…と言う設定。

老境を迎えたヒロインは連合赤軍事件の指導者だった永田洋子の獄死や東北の震災を経て、あるキッカケによりそれまで関係を断ってきた「昔の同士」と再会する。

あさま山荘事件をよく知っている人が読めばかなり面白いと思うのだけど、私のようにあさま山荘事件を知らない人が読んでもグイグイ引き込まれると思う。

女お一人様の老後の生活の描写がリアルな上に、その女は脛に傷を持つ身ときたら、面白くない訳がない。

ただし、主人公や登場人物達に思い入れが出来るかどうか…と言われると微妙なところ。

エキセントリックな人ビックリ間大集合って感じなので、ついていけない人もいるだろうし、生理的に無理な人もいると思う。

何しろ連合赤軍だからなぁ…色々な意味で普通ではない。

連合赤軍と言うとハイジャック事件とか、あさま山荘事件で鉄球であさま山荘を壊している場面くらいしか思いつかなかったのだけど、この作品ではハイジャック事件よりも連合赤軍内で起こったリンチに焦点が当てられている。

それについては詳しく書くとネタバレになってしまうので自粛するけれど、女性らしい視点で事件を突っ込んでいるところが面白いと思った。

ただし、あくまでも桐野夏生節なので受け入れられない人もいるかとは思う。

今回、私が個人的に感心したのは桐野夏生が老人にテーマを持ってきたところ。

出世作の『OUT』は中年女性が主人公だった。『魂萌え!』は初老の女性。どちらかと言うと中年女性だったり、少女が主人公だったりする作品が多かった。

今回の作品は『魂萌え!』よりも老境をリアルに描けていた気がする。

この作品の主人公は特殊な設定の人ではあるものの「脛に傷を持たない人」なんて、そうはいないように思う。

誰もがどこか後ろめたい何かを抱えながら死を意識していくのだと思うと、この作品は「特別な体験をし人の物語」ではなく「誰もが感じる物語」だと思うのだ。

桐野夏生はやっぱり上手い。

一気読み出来るレベルで面白い作品だった。

 

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