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輪違屋糸里 浅田次郎 文春文庫

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感想を書いて欲しいとのリクエストを戴いたので読んでみた。

幕末を舞台にして時代小説で新選組の芹沢鴨暗殺事件がテーマになっている。今回の感想はネタバレを含むので苦手な方はスルーでお願いします。

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輪違屋糸里 浅田次郎

ざっくりとした内容
  • 物語の時代は文久三年八月。
  • 壬生浪士組と近藤勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深める京都が舞台。
  • ヒロインは土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里。
  • 輪違屋の音羽太夫が芹沢に殺され、糸里は浪士たちの内部抗争に巻き込まれていく。

感想

上下巻の作品だけど上巻の真ん中あたりまでは読むのが非常に辛かった。

新選組の人物設定とか、新選組とか変わっていく女達の紹介がダラダラと続いてウンザリ。作品としては必要だって事は分かっていたけれど、新選組の人物設定って、時代小説とか幕末が好きな人達の間には「暗黙の了解」のようなものがあって、既に知っている人にとっては苦行だったと思う。

新選組に関わる女達の話については、それなりに読めたけれど、それでも引き込まれるほどの面白さは無かった。

面白くなってきたのは上巻の半ばから。

物語が転がりだすと、ストーリーテラー浅田次郎の魅力が発揮されてきた感じ。ただ、正直私の好みの文体では無かった。登場人物達がそれぞれ誰かに語りかける形で物語を繋いでいくのだけれど、そもそも寡黙であって欲しい人物がいくら恋人相手だからといってベラベラ喋るられと興醒めしてしまうと言うか。

女の目線から見た新選組と言うのは斬新ではあったけれど、女の視点で読むと、どうも納得のいかない箇所が多かった。

特に「好きな人以外に処女を捧げる事なんて無理」と言っていた16歳の糸里が、いくら恋人のためとは言っても、自分の親くらいの男に処女を捧げてしまうあたりは「そりゃ、無いぜと」と驚いてしまった。

そして「事情は分かるが、そこはオッサンも遠慮しとけよ」とも思った。このくだりについては、オッサンドリーム全開過ぎて女にはついていけなかった。

面白いと思ったのは芹沢鴨の愛人だったお梅の生き方。不憫過ぎて、不幸過ぎてたまらなかった。いらぬ苦労をする女ってのは、どの時代にもいるのだなぁ……とか。

そこそこ面白く読ませてもらったし、ラストは綺麗にまとまったと思うのだけど、私の好みでは無かった。女達に焦点を当てていたせいか、どうも新選組の面々が格好良く見えなかったし、女達にしても「そこにシビれる憧れる」ってほどの女もいなかった。

壬生義士伝』を読んだ時にも思ったのだけど、作者は時代物よりも現代物の方が面白いように思う。

時代物なら『天切り松闇がたり』のシリーズのように、もっとコメディチックな物の方が合っているような。

時代小説の中でも読者の中にイメージが出来上がっている幕末物、新選組物、赤穂浪士物あたりって、新しく書くのが難しいのかも知れないなぁ……と思った作品だった。

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