評判の良かった映画の原作本。映画はかなり人気があったみたいだけれど、私はその良さがちっとも分からなかった。
「もしかしたら原作の小説を読んだら感想が違ってくるのかも」と思い手に取ったのだけど、小説は映画以上に良さが分からなかった。
かもめ食堂
ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。日本人女性のサチエが店主をつとめるその食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握る「おにぎり」。けれどもお客といえば、日本おたくの青年トンミひとり。
ある日そこへ、訳あり気な日本人女性、ミドリとマサコがやってきて、店を手伝うことになり…。普通だけどおかしな人々が織り成す、幸福な物語。
アマゾンより引用
感想
フィンランドで「こだわりの食堂」をはじめた日本人の独身女性と、その食堂で働くことになった日本人女性達の物語。
宝くじで当たった資金を元手にしてフィンランドに食堂を開く…というスタートに「なんじゃこりゃ?」と思ってしまうタイプの人には受け入れられない物語だと思う。
なんと言うのかなぁ…人生のつらいこととか都合の悪いことは一切描かれていなくて、独身女性の桃源郷のような世界感に辟易してしまった。
これは『センセイの鞄』を読んだ時のモニュモニョ感と少し似ている。
小説には「現実に即した話」と「非現実的な話」があって、この作品は後者に属するのだと割り切って読めば、それはそれで楽しめるのかも知れない。
しかし、そんな事以前に、私はこの作品のヒロインが好きになれなかった。
ヒロインは「食べる」ということにコダワリを持っていて、自分の理想の食堂を作るのだけど、彼女の持つコダワリが私にはどうにも好きになれなかったのだ。
たとえば「おにぎり」のエピソード。ヒロインは「おにぎりは日本人のソウルフードだから」と言って、中に入れる具を「シャケ・オカカ・ウメ」にこだわる。
周囲から「フィンランド人の口に合うようにアレンジしてみては?」と忠告されるが、断固として拒否。
私はこのエピソードを読んだ時には「このヒロインは食べてくれる人のために料理してるんじゃなくて、自分の自己満足のために料理にしてるのだなぁ」と感じた。
オニギリのエピソード以外にも「それはどうなんだろう?」と疑問に思うことが多かった。
私はいま、結婚して子供もいる身だけれど「たぶん結婚しないだろうなぁ」と思っていたので独身時代は「死ぬまで1人で生きる」ということについて、真剣に考えていた。
だからこそ、その分だけこの作品に対して反感を持つのだと思う。1人で生きるのではなく「むれ」を作って、傷を舐めあっているところが、どうにもこうにも。
しかし、この作品が愛される理由もなんとなく分かる気がする。是非、男性の意見も聞いてみたいところだ。それにしても、私には受け入れ難い作品だった。