読んだ本の『50音別作家一覧』はこちらから>>

映画『博士の愛した数式』感想。

映画『博士の愛した数式』の前後編を視聴した。

『博士の愛した数式』は小川洋子の出世作。小川洋子は『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞しているが『博士の愛した数式』で人気作家の地位を不動のものにした。

created by Rinker
新潮社
¥649(2020/09/19 08:11:50時点 Amazon調べ-詳細)

私は小川洋子のデビュー直後から小川洋子を追いかけ続けるほどに小川洋子が好きなのだけど、映画は今まで観たことがなかった。(原作の感想はこちら

…恥ずかしながらアレですよ。「原作ファンはどんなに美しく実写化しても納得出来ないんでしょ?」みたいに言われるのが嫌だったのだ。

それなのに夫が突然「そう言えば観たことなかったわ。小川洋子って白蓮さん好きだったよね」とレンタルしてきたので、観ない訳にはいかなくなってしまった。

今回は純粋な映画の感想…と言うよりも「小川洋子のマニアが観た映画の感想」になります。ナチュラルにネタバレも入ってくるのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

スポンサーリンク

博士の愛した数式

博士の愛した数式
監督小泉堯史
脚本小泉堯史
製作総指揮椎名保
出演者寺尾聰
深津絵里
齋藤隆成
吉岡秀隆
音楽加古隆
公開日本の旗 2006年1月21日

あらすじ

とある中学に新任の数学教師が赴任してきたところから映画がはじまる。

数学教師は子ども達に自分がルート(√)と呼ばれるようになったキッカケを話はじめる。

数学教師は母子家庭で育った。母親は家政婦をしながら、ルートを育ててくれていた。

母親は、交通事故による高次脳機能障害で記憶が持たない元数学者「博士」の家で働くことになった。

博士はこよなく数学を愛し、他に全く興味を示さないのだが、ルートの母親に10歳の息子がいることを知った博士は、幼い子供が独りぼっちで母親の帰りを待っていることを居たたまれなく思い、次の日からは息子を連れてくるようにと言う。

次の日連れてきた「私」の息子の頭を撫でながら、博士は彼を「ルート」と名付た。

そして、その日から博士とルートと母親の3人の生活がはじまる……

原作厨による違いポイント

映画版『博士の愛した数式』は原作を忠実に再現した作品…との評判だったけれど、実のところそうでもなかった。

まず出だしからして随分違う。映画版は数学教師になったルート少年が生徒に語る場面からスタートするが、原作では物語のラスト近くでルートが博士に「数学教師になりました」と報告する程度。

そして原作と映画版の決定的な違いは博士と義理の姉の不倫話の扱い。

原作ではほんのり漂わせる程度になっていて読者は「あっ!」と気がつくようになっているのだけど、映画版ではガッツリと義理の姉に心情を語らせている。

私は原作の方が好きだけど、原作の場合読み手によっては気づかない人もいるかもな…くらいの扱いになっているし、映像として観ると場合「ふんわり漂わせる」程度では観る人には伝わらないので、映画版での描き方もアリだと思う。

小川洋子が描きたかったのは「博士と義理の姉の不倫話」ではなかったと思うだけに、ちょっと残念な気がするけれど「受け手の解釈の違い」の範疇だと思う。

役者さんの好演が光る!

『博士の愛した数式』は誰が主人公でテーマは何なのか?

……と言う問題はさておき、役者さんの演技が素晴らしかった。特にルートの母親を演じた深津絵里と博士を演じた寺尾聰。

『博士の愛した数式』の映画キャストが発表された時、寺尾聰については「無難にハマり役だろうな」と予想していたけれど、深津絵里も意外と良かった。小川洋子ワールド的主人公って感じ。

残念だったのは博士の義姉を演じた浅丘ルリ子。どうして浅丘ルリ子でなければいけなかったのか? 私には義姉に浅丘ルリ子を起用した理由が1ミリも分からなかった。小川洋子ワールドに突っ込むにしては、あまりにも下品。1人だけ悪人テイストが漂っていて残念過ぎた。

数学愛は忠実に再現されていた

博士が語る「数学への愛」については、原作を忠実に再現していた。

これについてはルートが数学教師として生徒達に数学の楽しさや美しさを語る場面が効いていたと思う。

そして「愛」と言う意味では、博士の愛、ルートの母の愛、ルートの愛が美しき表現されていて公開当時ヒットしたのもうなずける。

小川洋子本人もこっそり出演している件

映画版『博士の愛した数式』の原作ファンの見どころは、なんと言っても原作者、小川洋子自身が映画に出演している場面。

ラスト近くの薪能の場面。ルートの母、博士、博士の義理の姉が薪能を鑑賞しているのに並んで、小川洋子も薪能を観ているのだ。薪能の場面が出てきたら、正面左側を注目して戴きたい。

小川洋子の文庫本や単行本の折返しにある「著者近影」そのままの小川洋子の姿を観ることが出来る。小川洋子ファンからすると、そこを確認出来ただけでも「観た甲斐があった」と言うものだ。

小川洋子って、作風が作風なだけに引っ込み思案な感じの人かと思っていたけど、自分の書いた作品の映画に出ちゃうようなお茶目な一面があったのだなぁ。

小川洋子ファンの視点から観ると、良い部分もあれば残念な部分もある作品だけど「原作知ってます」って部分を抜きにして観ると、素晴らしい作品だと思う。

役者さんの演技、音楽、映像(舞台背景)どれを取っても素晴らしい日本映画だ。そして映画を観て原作が気になった方は原作も手に取って戴きたいな…と思う。

created by Rinker
新潮社
¥649(2020/09/19 08:11:50時点 Amazon調べ-詳細)
スポンサーリンク
スポンサーリンク
映画
スポンサーリンク
白い木蓮の花の下で
タイトルとURLをコピーしました