『はるかなるわがラスカル』は、日本人が大好きなアニメ『あらいぐまラスカル』の原作本。私も子どもの頃、ラスカルの可愛さに夢中になった1人。アニメは観ていたけれど、いままで原作は読んだことがなかった。
緊急事態宣言が発令中に私の読書の師匠が感想を書いているのを読んで「これは読まねば」と言う使命感に駆られ、再開した図書館で早速借りてきた。
アニメも素晴らしかったけれど、原作もかなり面白かった!
緊急事態宣言は解除されたものの、気が滅入るニュースの多いご時世に読むのに相応しい爽やかな作品だと思う。
はるかなるわがラスカル
- アニメで放送されていた『あらいぐまラスカル』の原作本。
- スターリング・ノースが自分の子ども時代の体験を綴った作品。
- 母を亡くし、父親と2人暮らしをしていたスターリング少年とあらいぐまラスカルとの生活を描く。
感想
まず感心したのは「あらいぐまラスカルのアニメは原作に忠実だったんだな」ってこと。
原作とアニメには相違点がいくつかある。
- スターリングの母親はアニメでは話の途中で亡くなるけれど原作は最初から父子家庭
- ラスカルとスターリングの出会いの相違
- スターリングがラスカルを手放すまでの流れの相違
……と書き出したら細かい部分が色々違っているけれど、大筋の流れは同じだし、何よりもアニメは原作の世界観を上手く表現出来ている。
私がアニメよりも原作の方が良いと思ったのは、アニメ以上にスターリング少年が子どもらしく生き生きと生活していた…ってこと。
またアニメ版では母親が物語の途中で亡くなるので、スターリング少年の不憫さが前に出てしまっているのだけれど、原作では母親がいない寂しさはあるものの、男2人で楽しく暮らす父子家庭の姿が描かれている。
スターリング少年と父親との暮らしは、なんとなく辻仁成と息子の生活連想してしまった。
アニメ版ではスターリング少年とラスカルが長らく一緒に暮らしていた印象を持ってしまうのだけど、実際にスターリング少年とラスカルと暮らしていたのは1年に満たない。「野生動物を人間の手元に置いて飼うのは無理」ってことについては、原作の方がキッチリと描かれていて好感を持った。
動物好の目線で見て面白かったのは「ラスカルが音楽を聞く」というくだり。
音楽を聞くと言っても、アライグマなりに好みがあるらしく、ラスカルはワーグナーよりも流行歌の方が好きだったらしい。
「動物が音楽を聞く」だなんて、動物を飼ったことのない人には信じられないかも知れないけれど、私が子どもの頃に飼っていてた犬は私がピアノを引きはじめると必ず足元に来て寝そべっていた。
犬にも音楽の好みがあるらしくクラッシックのCDをかけると、いそいそとやって来て寝そべっていたけど、ロックはお好みではなかったらく絶対に近寄ってはこなかった。
動物も音楽を感じる感性があるんだなぁ!
『はるかなるわがラスカル』は動物と人間との関わり方を描いた作品として読んでも面白かったけど、古き良きアメリカを描いた作品としても素晴らしいと思う。
子どもの頃、アニメで『あらいぐまラスカル』を見た時は、作品の舞台はカナダだと勘違いしていた(たぶん『赤毛のアン』と混同していたのだと思う)のだけど、ラスカルの舞台はアメリカ合衆国のウィスコンシン州。
豊かな自然の中で遊ぶスターリング少年は本当に楽しそうだし、とりあえず「自分でカヌーを作る」とか浪漫しかない。
アニメの『あらいぐまラスカル』が素晴らしいことは日本人の多くの人が知るところだと思うのだけど、ぜひ原作の『はるかなるわがラスカル』も読んで戴きたい。大人も子どもも楽しめる名作だと思う。