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老父よ、帰れ 久坂部羊 朝日新聞出版

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廃用身』を読んからと言うもの、久坂部羊の新刊が出たら出来るだけ読むようにしているのだけど、気楽な感じで面白かった。

久坂部羊は比較的アタリの多い作家さんなのだけど、それでもどの作品も面白い…とまでは言い難い。

今回はコメディタッチの介護小説。

久坂部羊はマッド・サイエンティストが出てくるような医療物と、コメディタッチの医療&介護物があるけれど『老父よ、帰れ』は完全にコメディ寄り。

コメディと言っても、根本は真面目な介護小説なので安心して読んで戴きたい。

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老父よ、帰れ

ザックリとこんな内容
  • 主人公の好太郎は45歳。認知症の講演会に行き、心を揺さぶられた好太郎は老人ホームから認知症の父を自宅に引き取ることに。
  • 好太郎はは介護休暇を取得し自宅で認知症の父の介護をスタトートさせる。
  • 一生懸命父の介護に懸命に取り組む好太郎だったが、なぜか空回りをしてしまう。
  • 父との関係は上手く行かないし、マンション住人達からも迷惑がられることになり……

感想

介護系の小説って、嫁が主人公である事が多くて、男性が主人公として介護に取り組むパターンは珍しい。しかも、まさかのコメディタッチとか!こんな介護小説読んだことない。

昨今は介護小説も珍しくなくなったけど、男性が主人公の介護小説って、とかく汚いところはスルーして、ふんわりした内容だったり、逆に「人の生き方とは?」みたいな高尚過ぎる内容だったりする事が多い。

『老父よ、帰れ』は、ふんわりした内容でもなく、高尚過ぎることもなく、男性が一生懸命介護に取り組んでいる姿がとても良かった。

ただし主人公は一生懸命介護に取り組んではいるものの、決して上手くやっている訳でない。むしろ女性視点で読むと「どうして、そうなるかなぁ?」と言う事の連続だった。

夫や弟、義兄を見ていて思うのだけど、女性よりも高齢者の扱いが圧倒的に下手な気がする。

気が短いと言うのか、堪え性が無いと言うのか。

1人で焦って、事をすすめて、失敗して、怒っている印象。すべての男性がそうだとは言わないけれど、男性の方が介護にしても育児にしても結果を欲しがる傾向にある気がする。

主人公の好太郎は真面目だし、勉強熱心だし「父のために頑張ろう」と言う意欲は感じられるのだけど、始終空回りをしてバタバタしている。

好太郎を見ていると、要領悪さにイライラすることもあるけれど、それでも一生懸命、介護と父親に向き合っていく姿勢は素晴らしいと思った。

また『老父よ、帰れ』では、家族だけでなく認知症の高齢者と近隣住民との問題も取り上げていてたのは興味深かった。

  • 徘徊
  • 万引
  • 火の不始末

認知症の高齢者が抱えるリスクはとても大きい。

じゃあ「高齢者が動けないように縛りつけておけば良いのか?」って話になる訳で、この問題はこれから先もっと真剣に考えていく必要があると感じた。

『老父よ、帰れ』は、これから親の介護をする可能性のある中高年の方に是非、読んで戴きたい。

読む人によって感想は違うと思うのだけど、読んで面白いだけでなく、様々な事を考えさせられる良い作品だと思った。

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白い木蓮の花の下で
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