中山可穂と江國香織の作品って毎度、感想が書き難い。
下手な事を書くと熱烈なファンから特攻されるからだ。
このサイトは弱小過ぎるほどに弱小で見てくださっている方は少ないのだけれど、それでも中山可穂と江國香織関係は特攻される事が多い。(特攻と言うのは悪い意味で絡まれる事。作品や作家さんについて語り合うのは歓迎です)。
だけど嘘は書けないし、書かずにはいられない。
特攻上等。「かかって来いや!」と言う覚悟で書こうじゃないか。
愛の国
ファシズム政権下で同性愛が禁じられている近未来の日本。ミチルは、公演中の落下事故で記憶と最愛の人を失った。
秘密警察に追われ、収容所へ送られてしまうが、レジスタンスに助けられ、自分が何者なのかを問いながら巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地へ。
孤独な魂の遍歴と救済、壮絶な愛のかたちを描いた王寺ミチル最後の黙示録。
アマゾンより引用
感想
この作品。中山可穂が生み出した登場人物の中でファンから最もあいされているだろうと思われる「王寺ミチル」が主人公。
私にとっても王寺ミチルは特別な存在だし、王寺ミチルが初登場した『猫背の王子』は私が中山可穂にハマるキッカケになった作品だ。
そしてこの作品。一言で言うなら「インテリの大人が本気出してラノベ書いたらこんな風になりました」ってところだ。
この作品は中山可穂が王寺ミチルのために書いたラノベだと思う。
贔屓目に見ても中山可穂のファンではない普通の大人には読み難いんじゃないかと思う。私だったら、そのご都合上にウンザリして本をぶん投げていると思う。
もっとも私は中山可穂のファンだし、王寺ミチルが好きなので本をぶん投げる事はなかったし、面白く読ませてもらった。
「ラノベ」と表現したけれど、それは決してこき下ろしているのではなくて、「ここまで来たか!」と清々しくさえあった。
物語の筋はあると言えばあるし、無いといえば無い。
王寺ミチルの恋物語で、時代背景は架空設定。日本が舞台だけど同性愛が迫害されていて「ネオナチ」なんてものが登場してしまっている。
それもこれも王寺ミチルと彼女の恋を描くためのもの。無理な人には無理だと思うし、楽しめる人には楽しめると思う。
これまで私はずっと中山可穂に「恋ではなく愛を書いて欲しい。恋のその先を書いて欲しい」と願ってきたけど、この作品を読んで吹っ切れた。
もうずっと恋を描く人でもいい。誰がどう言おうが、私は一生この人について行くと。ここまで恋の形を突き詰めてくれたら、もう何も言うことはない。
前回の小説からは長いこと待たされてしまったけれど、よくぞこの作品を書いてくれたと感謝したい。
そして次の作品がいつになるかは分からないけれど、楽しみに待っていようと思う。