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弱法師 中山可穂 文藝春秋

この上なく陳腐な恋愛小説集だった。

陳腐さ加減レベルで言うなら『世界の中心で愛を叫ぶ』と肩を並べられるのではないかと思う。

最初のページを読めば、話の流れから人物設定まで予想できてしまうような話ばかりだった。あまりにもお約束過ぎな物語り。

しかし、けっこう好きだったなぁ。中山可穂が書いた同じくらいの長さの小説集で較べるなら『ジゴロ』や『花伽藍』よりも好きだ。

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弱法師

叶わぬ恋こそ、うつくしい――能の演目に材をとり、繊細なまでに張りつめた愛の悲しみをとらえる作品集。

雨の気配を滲ませた母子に宿命的に惹かれ、人生設計を投げ捨てたエリート医師(「弱法師」)。編集者の愛を得るために小説を捧げ続けた若き作家(「卒塔婆小町」)。
父と母、伯母の不可思議な関係に胸ふるわせる少女(「浮舟」)。

能のモチーフをちりばめ、身を滅ぼすほどの激しい恋情が燃えたつ珠玉の3篇。

アマゾンより引用

感想

三篇あった中で、もっとも好きだったのは『卒塔婆小町』だった。

中山可穂が主人公に据える「恋に熱く、一直線で一途過ぎる、目の前のことしか見えない女性」を、男女主人公それぞれに割り振ったような形になっていたが、分割した分だけ魅力半減……ではなくて、分割したからこそ、かえってそれぞれの個性が光っていたように思う。

そして、何よりも私が惹かれたのは、この恋物語に一縷の救いも見出せなかったという点である。

今までの中山可穂の作品は、どんなにドラマティックに盛り上がっても、ラストで無難にまとまってしまうことが多かったのだが、この作品は、情け容赦なくやってくれたなぁ……という印象。

『浮舟』は、いささか、おとぎ話めいた部分が気になったが、BGMにシューベルト曲を持ってきていたのは良かったと思う。

私は10代の頃、訳もなくシューベルトにハマった覚えがあるので、ちょっと思い入れて読んでしまった。

シューベルトの曲は美しいけれど聞いていると、なんだか不安を掻き立てられるようなところがあるので物語の危うさとシューベルトが妙にマッチしていたと思う。

苦しい恋を貫き通すというシュチュエーションもシューベルト的。ただ、純愛路線でいくなら、もう少しストイックでも良かったかなぁとは思ったりもした。

ヒロインの少女の物分りの良さもいささか興ざめな感アリ。しかしながらラストのシュプレヒコールはとても良かった。

金八先生なみの直球だったが、心に突き刺さってきた。

表題作になっている『弱法師』は、よくまとまっているけれどイマイチだった。作者の書く「少年」には、ちょっと無理があるような気がした。

性の限界、あるいは子を持たぬ人間が、子どもを書くことの限界を感じずにはいられなかった。

年を重ねるにつれ、思春期を思い返すのは難しくなってくるし、また自分の性ではないものを想像して書いたというあたりにイカサマっぽさが出てしまっていたように思う。

敢えてこういう題材を持ってくる必要性を感じられない作品だった。

こうやって感想を書いてみるとイマイチな感じなのだが、これだけ、痺れさせてもらって、酔わせてもらえれば、それ以上は望まない。

ジゴロ』を読んだ時に「中山可穂の短編は駄目だ」と思ったのが嘘みたいだ。ハードカバーで買ったのだけど「買って良かった」と心から思える1冊だった。

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白い木蓮の花の下で
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