関節球体人形に興味のある人なら、それなりに楽しめると思うのだが、そうでなければちょっと厳しいかな……と思う作品だった。
天野可淡や四谷シモンあたのをモデルにして描かれたものなのだろうか?
モデルというのは言い過ぎでも、頭の隅にはあったと思う。
私は人形好きなので、楽しめたけれど人によっては、楽しめないどころか君が悪いんじゃないかと思う。人形って好き嫌いが分かれるものなぁ。
コッペリア
恋をした相手は人形だった。
作者は如月まゆら。だが、人形はエキセントリックな天才作家自らの手で破壊されてしまう。
修復を進める僕の目の前に、人形に生き写しの女優・聖が現れた。まゆらドールと女優が競演を果たすとき、僕らは?
日本推理作家協会賞受賞作家が新境地を開く、初めての長編ミステリー。
アマゾンより引用
感想
加納朋子の作品を読むのは3冊目だが、既読の2冊は揃って一話完結の連作短編だったので、長編は初チャレンジ。
加納朋子は短編向きの人なのだろうか?
長い話で、引っ張っていくエネルギーには欠けるような気がした。長編にしたことで、加納朋子の弱点が目についてしまった印象が強い。
せっかく「天才」を登場させているというのに、その恋や、親としての情愛は描ききれていなかった。
唯一、生き生きと動いていたのはヒロインの若い女優だけで、男性人にいたっては壊滅的だった。中年には中年の、若者には若者の魅力があると思うのに、どの人物がのっぺりと、通り一遍に描かれていたのが残念だ。
かと言ってストーリー重視で引っ張っていけるだけの物があるかと言うと、そうでもなかった。
関節球体人形の物憂い妖しげな世界感を楽しむだけなら、まずまずのものだと思うが、それ以外にオススメできるところはなかった。
人形好きの友人には「ちょっと珍しい本があるから読んでみて」と勧めてみるつもりだけど。今ひとつ乗り切れなかった1冊だった。