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無菌病棟より愛をこめて 加納朋子 文藝春秋

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急性白血病と診断された作者、加納朋子自身の闘病記。小説枠からは外れる作品なのだけど、素晴らしい1冊だった。

難病や死病に罹った人の闘病記はたくさん出版されているけれど「作家が」となると珍しいかも知れない。

白血病と言えば小説やドラマに登場する花形的な存在。でも、それはあくまでも「作り事」の世界だ。

その作り事の世界を現実のものとして受け止め、そして新たに作品として昇華させた事は素晴らしいと思う。

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無菌病棟より愛をこめて

愛してくれる人たちがいるから、死なないように頑張ろう。

―急性白血病の告知を受け、仕事の予定も、妻・母としての役割も、すべてを放り出しての突然の入院、抗癌剤治療の開始。

辛い闘病生活の中で家族と友人の絆に支えられ、ユーモアを忘れずに人気ミステリ作家が綴る、たくさんの愛と勇気、温かな涙と笑いに満ちた闘病記。

アマゾンより引用

感想

小説家の書く作品なので、作品の中の全てが事実であるはとは言わない。

多少の脚色があるとは思うのだけど、作品を読んでいると作者自身の人柄と、ご家族(特にご主人)の人柄の温かさが伝わってくる。

加納朋子が病気をした事で家族の絆が強まった部分もあるだろうけれど、それが無くても良いご家族だったのだろうと思う。

辛い闘病生活の中でも、ヲタク的な楽しみを見つけたり、あくまで前向きに状況と向き合ったりする明るさは素晴らしいと思った。なんと言うか……しみじみ頭が下がる。

それにしても、読んでいてこんなに辛い作品は久しぶりだった。

私自身、子供の頃に大病をした事があるのと、家族が次々と病気や怪我で長期間病院のお世話になった経験があるだけに、他人事として読む事が出来なかった。

この作品は作者が退院することで終わっているのだけれど、闘病自体が終わった訳ではない。加納朋子が再発せずに元気でおられることを願わずにはいられない。

ものすごく色々な感情を掻き立てられる作品だった。

そして「この作品を書いてくれてありがとうございます!」と強く思った。きっと、同じ病気を患った人やそのご家族。そうでなくても病と向き合い人達の力になるだろうと思う。

文章で沢山の人を力づけることが出来るだなんて、作家って良い仕事だなぁ……と羨ましく思った。

理屈抜きで、たくさんの人に読んで欲しいと思えるような素晴らしい1冊だった。

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