小川洋子とクラフト・エヴィング商會の共著。
注文者が小川洋子の書く登場人物で、注文先がクラフト・エヴィング商會と言う設定。
一応、どちらの作品でもなく「共著」と言う形になっているけれど、小川洋子テイストだと言っても良いと思う。
注文の多い注文書
「物」にこだわった作品は小川洋子の真骨頂。
パッっと頭に浮かぶのが『薬指の標本』だけど、それ以外にも小川洋子には何か特別な『物』にこだわった作品が多い。
そして、その『物』に対して特別な付加価値を見出していくのも小川洋子流。小川洋子ファンなら読んでおいて損は無い作品だと思う。
……とは言うものの、個人的には非常に物足りない作品だった。
どの作品も小粒過ぎてパンチが無いのだ。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と言うけれど、毒が薄くて辛くも無い。
雑誌の中の1記事として読むなら、それはそれで面白いと思うのだけど、1冊の本として読むと物足りないのだ。
もちろん、褒めようと思えばいくらでも褒められる。何か1つの物に特別感を見出すのは小川洋子が得意とするところで、どの作品もそれなりにはまとまっている。
だけどファンとしては「貴女はもっと書ける人でしょ?」と思わずにはいられないのだ。
書くことが出来ずに、ただひたすら読むしか脳のないファンは貪欲なのだ。作家に対して「もっと・もっと」と求めてしまわずにはいられない。
私の場合は小川洋子のファンという立場から読んだので、こんな感想になってしまったけれど、クラフト・エヴィング商會のファンとして読むと、また違った感想になると思う。
文句ばかり書き連ねてしまったけれど、病院の待ち時間とかちょっとした暇潰しには良い作品じゃないかと思った。