この感想はネタバレを含むので「読もうかなぁ」って方は、遠慮していただいた方が良いかも知れないので悪しからず。
人工中絶を専門に行っている若い医師が、次々と人を殺していく……という話なのに、これっぽっちも怖くなかった。
殺人勤務医 大石圭
- 主人公は中絶の専門医として働く医師、古河。
- 古河はイケメンで周囲からの信頼が厚いがクレイジー。
- 古河は死に値すると判断した人間を地下室の檻に閉じこめて殺害していく。
あらすじを読むと怖そうな思えるし、拷問めいた、エキセントリックな殺し方が展開されるのに、以外と怖さを感じなかった。
やけに真面目な小説で、拍子抜けしてしまったのだと思う。
感想
『殺害勤務医』をホラーに分類するのは、どうなんだろう?
主人公の医師は、幼い頃に母親から虐待を受けていたらしく、ちょっと精神的にヤバイ人。
虐待の記憶があるからこそ次から次へとヤバイ殺人を犯していく。
その手口は残虐かつ残酷。本当なら、ゾゾッとしても良さそうなものなのに、これっほっちも感じなかった。
その反面、子供に対する虐待の場面や、動物への虐待、あるいは虐待をしている人々の言い分などは、やたらとリアリティに溢れていて、バランスの悪さ感じがした。
要するに。快楽としてのホラー小説にしては真面目過ぎるのだ。
正直なところ、私はこのテの作品は好きではない。だけど作者の言いたいことは分かるような気がした。
シンパシーのようなものを感じてしまったと言うのかなぁ。
「あとがき」を読んでいると、作者の大石圭は「なに、ハスに構えてるんだよ。コイツ?」と思うような、可愛げのないことを書いているくせに、ところどころで「心熱き人」であることが伺われる。
以外と真面目。そこがイケナイ。
大石圭の作品を読むのは、この作品がはじめてなので、あとがきの真面目さに引っ張られたのかも知れないけれど、ちょっと勿体ないような気がした。
いっそ、その熱い気持ちをストレートにぶつけたら、もっと面白い作品になったのではないか……と思ったりする。
ホラーとして、あるいはミステリーとして読むには面白くないのだが「つまらない」と切り捨ててしまうには、惜しいところがあるのだ。
作者が言いたいことは、なんとなく分かる。
分かるけれど、消化不良のまま終わってしまっているあたりが、なんともはな……
とりあえず、気になることがあるので、作者の作品は、もう1冊読んでみたいと思う。
殺人勤務医 大石圭 角川ホラー文庫