前回読んだ『最果てアーケード』の時も思ったのだけど、私の好きな小川洋子が戻ってきている。
もはや完全復活と思っちゃってもいいのかも知れない。
今回も、優しさに包まれた風を装いつつ、歪で意地悪な話を展開してくれていて満足させていただいた。
いつも彼らはどこかに
たっぷりとたてがみをたたえ、じっとディープインパクトに寄り添う帯同馬のように。深い森の中、小さな歯で大木と格闘するビーバーのように。絶滅させられた今も、村のシンボルである兎のように。滑らかな背中を、いつまでも撫でさせてくれるブロンズ製の犬のように。
――動物も、そして人も、自分の役割を全うし生きている。気がつけば傍に在る彼らの温もりに満ちた、8つの物語。
アマゾンより引用
感想
「これだよ。これ。これが小川洋子の真骨頂だよ」って感じの短篇集だった。
意地悪度は前回の作品よりも上を行くように思う。登場人物がいちいち歪なのだ。
私が特に気に入ったのはモノレールしか乗れない試食販売をする女の話。女と競馬馬との対比がゾワッっとするほど良かった。痺れる。これぞ小川洋子。
小川洋子は異端の人を描いてこそだと思う。
『博士の愛した数式』のように、異端を書きつつも人間愛寄りの作品も悪くはないけれど、なんだかちょっと物足りないのだ。
そして異端を描きつつ、決してグロにはならないところが小川洋子の調書だと思う。
今回の作品集には、どの作品にも動物が登場するのだけれど、その扱いがとても良かった
。小川洋子は心底動物が好きなのだろう。心にガツンと響くものがあった。動物達のちょっとした描写が上手くて、動物好きにはたまらないものがあった。表紙絵もメルヘンチックで好みだった。
これは図書館で借りたのだけど『最果てアーケード』と共に、改めて購入したいと思う。やっぱり好きだわ、小川洋子……と改めて感じた1冊だった。