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趣向 岡本賢一×笹生撫子 テディ文庫

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31歳にして、初めて買った「ボーイズラプ小説」の短編集である。

なんだかんだ言ってヲタク属性なのでボーイズラプは嫌いでないのだが、今まで買っていたのはあくまでも同人誌の二次創作物ばかりだったのだ。

流通に載っているオリジナルは読みたいと思ったことがなかったし、実際のところ、とりたてて「ボーイズラブが特別に好き」という訳でもない。

しかし人は時として成り行きに左右されて生きる動物なのだ。ま、そんな訳で年甲斐もなく初チャレンジしてみた。

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趣向

美しいことが恥とされるこの国で、美しく生まれついた者は「春を売って生きる」宿命を負う。

不遇の皇子は、ある日森で迷い、幼くして娼館へと送られた弟のおもざしを宿す一人の少年を見出す。高貴な身分を隠して「銀糖館」を訪れる皇子。鮮やかな剣さばきが少年の衣を切り裂く…。

『別冊June』で話題をよんだ衝撃のコラボレーションと、哀切なるエロティシズムに満ちた珠玉作二編を収録。

アマゾンより引用

感想

「所詮、腐女子の読み物だし」と思っていたのだが、これがなかなか面白かった。

ボーイズラブの原点である「やおい」の定義は「山なし・オチなし・意味なし」ということらしいが、そんなことはなかったし、ちゃんとした小説として成り立っていた。

もっとも、この短編集はボーイズラプにしては、イレギュラーなものらしく、どちらかというと耽美小説に近いのかも知れない。

ファンタジーだのSFだのを手がける男性作家さんが書いているというのも影響しているのかも。

なかでも『塔』という作品には、コテンパンにやられてしまった。

塔から顔を出す、もうすぐ男娼になるという纏足の少年と、名門校に通う少年の恋物語で本気で泣けてしまった。文句なしで私が愛する恋愛小説ベスト10入りである。

暗くて、重くて、痛い話で、挿絵も漫画やアニメ調ではなく、美麗なイラストであったところも好感が持てた。「所詮は、ボーイズラブ」と言ってしまえば、それまでだ。

ボーイズラブ小説の場合、読者を選んで書かれている分、文章に甘えがあるのも事実だが、これほどまで泣かせてくれて、感じさせてくれる恋愛小説には、滅多とお目に掛かれない。

私は文句なしの大絶賛なのだがボーイズラブ小説が好きな女性達の支持が得られるかどうかは、そうとう疑問が残る。

そのジャンルとしては異色の短編集なのだろうなぁ。

ジャンルがジャンルなだけに、広く読まれることがないだろう。そこのところが残念である。そして「これ、いいから読んでみて」誰彼なしに勧められないし。

自分の好みの作品を追いかけるのも良いが、たまには雑食も悪くない。「この本は売らずに、ずっと手元に置いておくぞ」と読了後に感じられる1冊に出逢えたことを幸せに思う。

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