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ボーイズラブと百合小説について考える。

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最近(2004年2月現在)書店のジュニア小説コーナーで『マリア様がみてる』という百合小説が平積みされていたり『百合姉妹』という百合専門誌が創刊されたりして「百合」と呼ばれるジャンルが勢力を伸ばしつつある。

実際に自分自身で目を通してみるのでは「ボーイズラブの女性版となる新勢力の誕生か?」などと思っていたのだが、どうやら「ボーイズラブ」と「百合」は、まったく違う系統の読み物のようだ。

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ボーイズラブと百合小説

女性作家さんが描く「男同士のハーレクインロマンス」とも言えるボーイズラブは、ゲイ小説でもない。

ボーイズラブは設定も話の筋も御都合主義的に、ぶっ飛んではいるものの、痩せても枯れても浪漫あふれる恋愛小説なのだ。

ボーイズラブと一言で行ってもエロ描写が濃い物や、薄い物までジャンルも様々だが、その様式にはある種の「お約束」がある。

読者は「難しいことは置いといて、とりあえず恋愛小説を楽しませて欲しい」と思っているので「恋人同士は最終的に愛し合わなければならない」という定義は必須になっている。

ボーイズラブの場合「この小説。主人公達が男同士である必要はないのでは?」なんて作品もあるほど「恋愛」とか「愛し合うこと」にテーマが置かれている。

お前が男だから好きになったんじゃない。お前だから好きになったんだ!

ボーイズラブラブの定型文とも言える上記のセリフはボーイズラブの本質を表現していると思う。

ボーイズラブのテーマは「1対1の恋」であって、それ以外のことはそんなに重要視されていない。

百合小説で描かれる恋愛

一方「百合」の場合、当事者同士に「相手を求めて止まない」という確固とした恋愛感情を持たないケースが多い。(もちろんボーイズラブ的なノリの作品もある)

恋愛というよりも行き過ぎた友情。

あるいは、思春期の女子にみられる特有の「グループ交際」を濃密に表現しているのが百合小説だと言ってもいいかも知れない。

男性にはイマイチ理解しがたい世界だとは思うが、中高生女子には、独特の掟があり、たとえば「親しい女子と手を繋いでトイレに行く」だの「決まったメンバーでお弁当を食べる」だの「下校する時のメンバー」だの、面倒くさい掟がある。

そして、その掟の中では、恋愛感情がある訳でもないのに、友達を取ったのだの、取られたのだの、裏切ったの、裏切られたの……というような世界が展開されているのだ。

もちろん、そういう流れに参加しない女子もいるが「あ。そのノリ分かる」という女性は存外多いと思われる。

ジュニア系でない作家さんの作品だと、三浦しをんの描く世界などは、限りなく百合小説のそれに近しいと思う。

百合小説ファンの中には「百合とレズビアンは違います」と言い切る人がいるが、なるほど百合とレズビアンは違う。

中山可穂や松浦英理子の作品は、レズビアン小説であり、恋愛小説でもあるが、百合小説はレズビアン小説でも、恋愛小説でもなく、あくまでも百合小説なのだと思う。

「百合」的現象を「思春期の女子にみられる特有の行動」という位置付けをしたけれど、もっと広い目で見るなら、OLにも世界にも「お弁当グループ」のようなものはあるようだし、主婦の間にも「ママ友」だの「公園デビュー」など、ややこしい掟が存在する。

そう考えると百合小説を「思春期特有のもの」と決め付けてはイケナイのかも知れない。

そういう視点で見れば、百合小説は極めて女性的な感覚をロマンティックに表現したジャンル……ということになるのだろうか。

個人的には今の流れの百合小説は好きではない……と言うりも、むしろ興味を持てそうにないのだ。

人間関係のドロドロが読みたいなら、もっと他に面白い作品があるし、同性愛を切なく書いている作品もある。

恋愛小説にも不自由はしない。なので、あえて、どこの部分も突出していない百合小説というジャンルに手を出す理由が見つからないのだ。

嫌いというよりも、アウト・オブ・眼中……といったところなのだ。

今回、読書禄に感想をあげた 『マリア様がみてる』は、お耽美な女子高の雰囲気が、それなりに面白くはあったけれど、それ以上でもそれ以下でもなかった。

漫画雑誌の『百合姉妹』においては語るべくもない。

いまの百合小説には圧倒的に愛が足りない。

百合小説は嶽本野ばらの広めた乙女ブーム、ゴシックロリータファッションの一般化、レズビアン作家の地味な浸透(?)などの流れと共に世間に踊り出てきた百合小説ではあるけれど、この路線のまま走っていくとするならば、そう遠くない日に萎んでいくか、マニア向けの物として認知されてしまう気がする。

作品数が増えて切磋琢磨するようになれば、その中から名作が生まれる可能性もあるだろうとは思うものの、今の路線でいくなら可能性は低いだろうと思う。

このムーブメントはいつまで続くのやら……しばらく遠いところから見ていたいと思う。

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