マイブーム内海隆一郎3冊目は短編集だった。
『○○の声』という題名ばかりの短編集。たとえば『風の声』とか『祈る声』とか。じっさいの意味で使う「声」よりも、むしろ第六感とか、ムシの知らせとか言うような、ちょっぴり不思議な声が多かった。
テーマとしては好きな類だったのだが、面白い作品ではなかった。
魚の声
あの〈声〉が聞こえると奇妙な出来事が…。
都会の隣人が、身近な自然が、風が、獣が牙をむき災禍を招く。現代日本のごく普通の日常の中に潜む、戦慄の物語。小説の名手、新感覚の短編集。哀感と恐怖!
アマゾンより引用
感想
もしかしたらこの内海隆一郎は、長編の人なんだろうか。短編になると、からっきし駄目な印象を受けたのだが……もしかしたら、題材が悪かったのかも知れないけれど。
私は霊感とか、そういう類のふしぎな能力とはサッパリ縁がないのだけれど、それでも「第六感」のようなものがあるのは、なんとなく理解できる。
いくら科学万能の時代とはいっても、まだまだ分からないことって多いし。そして、ちょっとくらい「不思議なこと」が存在する余裕も必要だと思うし。
たとえば……の話だが、河童とか座敷童子は、いないなより、いた方が楽しくていいぢゃないかというような。
不思議なものが忍び込む隙間のない世の中なんて、つまらないことこの上ない。どんなに明るい夜だって、ちょっと暗いところにいけば妖怪の1匹や2匹は……いないけどさ。うむ。
本の内容とは、どんどん離れていきそうなので、ここらで話を戻すとして。
「不思議なこと」に憧れる作者の気持ちはよく分かるが、まったく生かせていなかった感じがした
。餅は餅屋ではないけれどこういう題材のものは、ミステリーやホラーを書く作家さんの方が上手いこと処理できるように思う。
今回の作品はハズレ感が否めない。次の作品に期待しよう。