これ、凄く面白かった!
百田尚樹と言えば私の中で正統派ではなく「お騒がせ作家」と言うイメージ。ちょっと右寄りの活動をしてみたり、やしきたかじんの本(私は読んでいないし興味もないのでなんとも言えないけど)で、騒がれたり。
『カエルの楽園』はカエルに託した風刺小説。
「ああ…また積極的に喧嘩売っちゃってる感じ?」と思ったもののカエル好きとしては読まずにいられなかった。表紙のカエル、可愛かったから!
カエルの楽園 百田尚樹
- 国を追われた2匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。
- その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。
- 尖閣諸島問題、北朝鮮ミサイル問題等を風刺した作品。
感想
物語はカエルの世界。安住の住の地を求めて旅に出たアマガエルのソクラテスとロベルトは、カエルの楽園とも言える平和な国、ナパージュにたどり着く。
ナパージュでは「三戒」を守ってツチガエル達が平和に暮らしている。そのナパージュで起こった悲劇を描いた作品。
ナパージュは日本、ツチガエルは日本人投影している。「三戒」は憲法9条、その他も全ての言葉が実在の何かの置き換えとなっている。
ガッツリと思想の入り込んだ作品なので好き嫌いは別れるだろうと思うのだけど、私は面白く読ませてもらった。
そして最後まで読んでみての感想は「イソップ童話凄いな!」ってこと。
この作品、カエルに置き換える事で断然面白くなっている。イソップ童話って正しい事を言っているけれど、すっぱい葡萄を見上げていたのがキツネではなく「愚かな男」なら素直に読めないと思うのだ。
登場人物を動物に置き換えるだけで、こんなに素直に読めるのかと驚かされた。
この作品が「日本をイメージした想像の国の物語」なら、ここまで楽しめなかったと思う。
実際、田中慎弥の『宰相A』も、安倍首相を「宰相A」に置き換えた作品だけど、この作品のように面白くは読めなかった。
作風が違うと言えばそうなのだけど『宰相A』だって、登場人物が人間じゃなくてカピバラか何かだったら「カピバラ頑張れ! 負けるなカピバラ!」とカピバラを応援しながら読めたかも知れない。
なんとなく童話めいていて、サクサク読めるし、登場人物がカエルなので「ちょ…ツチガエル、それじゃあ駄目だって!」と何故か応援したくなるような、祈るような気持ちになって読んでしまった。
正直、物語のオチは「お察し」なのだけど手に汗握って読んでしまった。
ツチガエル達の馬鹿さ加減にはハラハラさせられっぱなしだし、ハンニバル兄弟の頑張りには泣けてしまった。
賛否両論別れる作品だと思うけれど、私は面白く読ませてもらった。
ただ、想像以上にサクサク読めてしまうので「ガッツリ何か読みたい」と思う時にはオススメしない。面白かったけれど小説としてはイロモノ枠だと思う。