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すぐ死ぬんだから 内館牧子 講談社文庫

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内館牧子って脚本家のイメージが強いけれど、最近は高齢者を主人公にした小説を発表していて、書店で平積みになっているとのこと。

昨年50歳になった私。「老人の生き方」とかそういうテーマに惹かれがち。親の介護問題に向き合いながらも「いつか自分も行く道だ」って覚悟が出来つつある今、高齢者が主人公の作品はちょっと興味ある…って言うか、かなり興味ある。

『すぐ死ぬんだから』の主人公は78歳の女性。これはもう「読むでしょ?」って事て手に取った。

今回はネタバレ込の感想なので、ネタバレNGの方はご遠慮ください。

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すぐ死ぬんだから

ザックリとこんな内容
  • 酒屋の妻として生きてきた78歳の忍ハナは、60代まではまったく身の回りをかまわなかった。
  • だが、ハナは実年齢より上に見られた事で目が覚める。「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。それ以降はずっとお洒落に気を遣って生きてきた。
  • 酒屋を息子夫婦に譲り、折り紙が趣味の夫と悠々自適なお洒落生活を送っているハナはとんでもない真実を知ることになる。

感想

好き嫌いはさておき。「内館牧子は上手い事書く人だなぁ~」と感心した。流石は人の心を掴むテレビドラマの脚本家。人間を書くのが本当に上手い。橋田壽賀子的と言うか、そんな感じ。

主人公のハナは78歳ながらも、意識高い系お洒落シニア雑誌から声をかけられるようなお洒落高齢女性。街中を歩いていると、たまに見掛けるよね。「あ…私もこんな風に年を取りたい!なんてお洒落な高齢者なの」って思っちゃうような高齢者。

たけど、このハナ。けっこう嫌なヤツで口が悪い。好きか嫌いかと聞かれたら、私は嫌い。

そもそも論として、ルッキズムについて議論されるこの時代に「何だかんだ言って人は見た目でしょ」って理論を全面に出してくるあたり、ちょっぴり時代のズレを感じた。なんかこう…バブル世代の価値観って感じ。

「高齢者でもお洒落をして元気に楽しく生きましょう」ってテーマは嫌いじゃないけど、どこかこぅ…歪みを感じてしまった。

だけど作品としては、そこそこ面白かった。テンポが良くて一気に読める。

おしどり夫婦として生きてきたハナが夫の死後、夫に愛人と隠し子がいたことを知るのはありがちな展開…って感じではあるものの、それでも立ち直っていくハナは応援したくなってしまった。

「まあまあくらい」には面白かったし、映像化するには良い作品だと思う。

ただ「高齢者をテーマにした小説」として読むと「大したことないな」と思ってしまった。なんかこぅ…浅い。ゲラゲラ笑って(笑えるかどうかは別として)読み捨てるには良いかも知れないけど、深く考えさせれるとか心に響くとか…って物がなかった。

…とは言うものの、内館牧子は高齢者をテーマにした作品を何冊か出しているようなので、気が向いたら別の作品を読んでみたいと思う。

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