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今夜、すべてのバーで 中島らも 講談社文庫

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暑くてダルくてたまらなくなると、中島らもが読みたくなる。

暑さと身体のダルさに負けてしまうような時は、中島らもでも読んでとことん駄目な感じを満喫した方がいいんじゃないかな……と言う発想。

中島らもの作品は人として駄目な感じがするけれど、読んでいると自分が許容させているような安らぎがある。

方向性は違うけれど遠藤周作の作品を読んだ時の安心感とも少し似ている。

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今夜、すべてのバーで

ザックリとこんな内容
  • 吉川英治文学新人賞受賞作。
  • アルコールにとりつかれた主人公の、幻覚の世界と日常を描く長編小説。
  • 一人称で描かれていて、入院日記的な感じ。

アルコール依存症の男性が主人公。たぶん多かれ少なかれ作者自身が投影されているのだと思われる。

感想

作品に出てくるエピソードは、エッセイで語られているエピソードと重なる部分があるので、作者の実体験が生かされているのだと思う。

普通の人だったら、場末の酒場で武勇伝を語るように「俺の駄目自慢」をするだろうところを、作家はそれを作品にする。因果な商売だな……と思ったり、羨ましくもあったり。

実は私の亡くなった父も酒で人生を狂わせた人なので、この作品に登場するアルコール依存症の人達の事は他人事とは思えない。

アルコール依存症関連の本を読むと「本人が1番苦しいんだ」と書かれているし、それもそうだと思うのだけど周囲にいる人間だって辛いのだ。この作品では、そこのところもちゃんと描写されているあたりは流石だなぁ……と感心する。

物語の最後で主人公はミルクで乾杯してアルコールと別れを遂げている。

しかし作者の中島らもは最後までアルコールと離れる事が出来ず駄目な方へと引っ張られてしまった。

誤解のないように補足しておくけれど、中島らもの死因はアルコール依存症や薬物依存によるものではなく、酔って階段から転落した事で頭を打った事からの脳出血だった。

……とは言うものの、中島らもがアルコール依存症だった事も薬物にハマっていた時期があったのも事実のようだ。

中島らもが破滅型の作家人生を突っ走ってしまった事は残念でならないけれど、中島らもがそんな作家だったからこそ、その作品が生まれたのだと思う。

中島らもは多くの作品を書いていて、これよりも面白い作品は沢山ある。

だけど、この作品は中島らも作品の中でも特別な1冊だと思う。私は中島らもを読み解くためには『今夜、すべてのバーで』と『アマニタ・パンセリナ』の2冊は必読だと思う。

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