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映画『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』感想。

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『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』は「30日間、マクドナルドの商品だけ食べ続けたらどうなるのか?」と言う実験を身体を張って行い、撮影したドキュメンタリー映画『スーパーサイズ・ミー』のモーガン・スパーロック監督作品。

スーパーサイズ・ミー』はマクドナルドだけが対象だったけれど、今回は健康志向に傾いてきている…とされるファストフードと、鶏肉業者とファストフード界の問題点を浮き彫りにする作品になっていた。

今回ネタバレ全開の感想なのでネタバレNGの方はご遠慮ください。

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スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !

スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !
監督 モーガン・スパーロック
脚本 モーガン・スパーロック
製作 モーガン・スパーロック
出演者 モーガン・スパーロック
公開 アメリカ合衆国の旗 2017年

ざっくりとこんな内容

続編のきっかけは、スパーロックに来た挑戦的なCMオファーだった。

前作によってアメリアで著名人となったスパーロックが、あるファストフード店へ暴露を目的に来店してみたら、そこは非の打ち所がないくらい健康的で透明性のある”優良ファストフード店”だった。という内容のCMです。

そこで、「本当にファストフード店は優良な店舗ばかりになったのか?」を調べるために、なんとスパーロック自らファストフード店を経営して答えを探ることにする。

ファストフード業界が健康志向に傾いたことで、客も健康的なものを求めるように変化した言われている。

まずスパーロックはヘルシーかつ安価なチキンを主軸にしたサンドイッチ店を立ち上げることょ決意。ブランディングや経営戦略などを専門家に協力してもらう。

さらにスパーロックはチキンも自分で管理するために養鶏場を借りて鶏を育てはじめる。

しかし養鶏場の経営に関わったことで、養鶏業界の闇やファストフード業界に巣食う闇の部分が浮き彫りになってくる。

ファストフードの健康志向化

ファストフードが健康志向化している…と言うのは日本でも感じることがある。

健康志向のファストフードと言うとサブウエイとか、モスバーガーとか。野菜多め…っみたいなイメージだろうか。最近ではマクドナルドもハッピーセットのサイドメニューがポテトだけでなくヨーグルトや枝豆が選べるようになっていたり。

その先を行くのがアメリカで人々の健康志向化の意識はどんどん強くなっている…らしい。

「らしい」と書いたのは「それって本当の意味の健康志向なのか?」って部分に疑問が残るから。少なくとも『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』を見ると、ファストフードが健康的になった…とは口が裂けても言えない。

健康ハローの罠

『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』では「健康ハロー」と言う言葉が何度も登場する。

ハロー効果とは、物事を見るときに一方の顕著な特徴に引きずられて全体評価が偏ることをさす、社会(行動)心理学の言葉。

例えば…商品にナチュラル、ヘルシー、無添加、天然、自然、産地直送、新鮮、フレッシュ、オーガニックなんて言葉が使われていると反射的に「健康に良さそう」と思ってしまいがち。

視覚的なところだと緑の包み紙で包まれた食品と、赤い包み紙で包まれた食品では緑の包み紙で包まれた食品の方を「ヘルシーっぽい」と認識してしまう…とかそういうところ。

しかし食品業界で使われている健康ハローは「健康そうにアピールする」ことが目的なので、本来の意味での「健康的な食事」とは大きくかけ離れている。

基準があってないようなもの

健康ハローで使われている言葉の多くは実際に何の意味もない…と言うことをスパーロックは明らかにしていく。

例えば鶏肉等に関しては「アメリカの鶏肉は餌に成長ホルモン剤を混ぜて育てた鶏が使われている」と言う話があったため、今でも「ホルモン剤不使用」の言葉がよく使われているけれど、現在は食品基準的にホルモン剤を使った育成は禁止されている。

そのため、アメリカで流通している鶏肉は全て「ホルモン剤不使用」なので、わざわざ表記する必要はない。

また「放し飼いした鶏を使っています」みたいな事が書かれていても、放し飼いの基準は私達がイメージしている放し飼いとは大きく離れていて、放し飼いとはとても言えない状況だったりする。

『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』はアメリカの作品だけど、日本でも似たようなことが起こっているのかも知れない。

養鶏業界の闇

『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』はグロ映像や残酷映像が苦手な方は観ないことをオススメする。

スパーロックは自ら養鶏場で鶏を育てて、育てた鶏を使ってチキンサンドのファストフード店を始めるのだけど「アメリカの一般的な鶏の育て方」が予想外だった。

養鶏場の鶏って日本人の場合「ブロイラー」をイメージすると思う。

ブロイラー

ブロイラー

昭和の頃は夜店でヒヨコ釣りをして「メスだから卵を産むよ」と言われたいたのに育ててみると大きな鶏冠が出てきた…なんて悲劇が生じたあのブロイラー。

養鶏場では狭い場所で大量のブロイラーが育てられているんだろうなぁ…くらいには思っていたけど、そもそもアメリカで食べられている鶏肉はブロイラーでさえなかった。

アメリカで流通している鶏肉の鶏は極限まで早く、大きく成長するように改良に改良を重ねられた品種だった。

アメリカで食べられている鶏は、なんと孵化してから6週間で出荷される。

ただし、身体が成長の速度についていけいなため、心筋梗塞を起こして死んだりするし、そもそも体重を支えられずに足の骨や関節が駄目になったりする。

アメリカでは鶏の生育にホルモン剤の使用が認められないことになっているけれど、アメリカで食べられている鶏はそもそもホルモン剤なんて使わなくても爆速で育つのだ。

養鶏場の下りは残酷に場面が多くて苦手な人は気分が悪くなっちゃうと思うし、場合によっては鶏肉が食べられなくなるかも。(私はそれでも食べちゃう派です)

鶏も可愛そうだけど養鶏場も可愛そう

鶏の現実を知ってしまうと「養鶏場経営者は酷い」みたいな気持ちになっちゃうか知れないけれど、養鶏場経営者だって気の毒だった。

アメリカのの鶏肉業界は「ビッグチキン」と呼ばれる大手の5社企業支配していて、養鶏農家を搾取する構造になっていた。

  • ビッグチキンが契約農家にヒヨコを送る。
  • 契約農家はヒヨコを選べない。質の悪いヒヨコが届いたら泣き寝入り。
  • 成長した鶏は、ビッグチキンの不鮮明な基準で評価される。
  • ビックチキンの評価によって報酬額が変動する。
  • 評価基準が不安定なので資本の少ない農家の収入は不安定になる。
  • 契約を結ぶときには、必要のない設備や機材を売りつけられる。
  • 養鶏家の多くは借金に追われている。

……この構造。なんとなく日本でも聞いたことがあるような。JAとか、JAとか、JAとか。

力の強い大企業だけが儲かっていくシステムはどこの国も同じなのだなぁ…と妙に感心してしまった。

スパーロックの店のオープン

様々な問題を明らかにしながら、スパーロックはファストフード店をオープンする。

スパーロックのファストフード店では健康ハローを使わずに、全てさらけ出していく方式。どのようにして育てられた鶏肉なのか、どれくらい健康からかけ離れた食べ物なのかを公表。

面白がって来店する人も多かったようだけど、スパーロックの養鶏場にはヒヨコが供給されなくなったらしく、スパーロックの店『ホーリーチキン』は閉店してしまったとのこと。

そして余談だけどスパーロック監督自身はセクハラやレイプを告発れている。

そのこともあって『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』以降、新しい作品は発表されていない。

スパーロック監督は残念な人物だったようだけど、それはさておき『スーパーサイズ・ミー:ホーリーチキン !』は素晴らしいドキュメンタリー作品だと思う。

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