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映画『キーパー ある兵士の奇跡』感想。

『キーパー ある兵士の奇跡』は、2018年のイギリス・ドイツの伝記映画。史実をベースにした作品で、日本では2020年に公開された。

サッカー好きの夫が「是非観たい」と言うのでTSUTAYAでレンタルしてきた。

今回は史実に基づく作品と言うことでネタバレを含む感想です。ネタバレNGの方はご遠慮ください。

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キーパー ある兵士の奇跡

キーパー ある兵士の奇跡
The Keeper
監督マルクス・H・ローゼンミュラー(ドイツ語版)
脚本マルクス・H・ローゼンミュラー
ニコラス・J・スコフィールド
出演者ダフィット・クロス
フレイア・メイヴァー(英語版)
音楽ゲルト・バウマン
公開イギリスの旗 2019年4月5日
ドイツの旗 2019年3月14日
日本の旗 2020年10月23日

ざっくりとこんな内容

物語の舞台は1945年。第二次世界大戦の真っ只中。前線で戦っていたナチス兵バート・トラウトマンは連合国の捕虜として、イギリスのランカシャー収容所収監される。ドイツは降伏したがドイツ兵はすぐ帰国することはできず、収容所で過酷な労働を強いられていた。

収容所でトラウトマンはサッカーすることを楽しんでいました。彼はゴールキーパーとして天才的な才能を持っていたのだった。

1点のPKも許さない鉄のような守備を見た地元のサッカーチームの監督、ジャック・フライアーは彼を連れ出し、強引に試合に出場させる。

ナチスをメンバーに迎え入れることに、選手たちは怒り出しましたが、連敗続きでスポンサーからも見放される直前のチームはトラウマンを受け入れるしかなかった。トラウマンの活躍でチームは久々の圧巻。ジャックは試合のない日はトラウトマンを自分の食料品店で働かせることにした。

ジャックの娘マーガレットは、地元サッカーチームのキャプテンのビル・ツイストを彼氏に持つ美しい女性。彼女には戦争で友人を失った過去があり、トラウトマンをチームに迎えることも自分の家で働かせることにも大反対だった。

最初は誰もがトラウマンを警戒をしていたが、チームに貢献し、かつ真面目に働くトラウマンに対してフライアー家の人々はトラウマンを受け入れるようになっていった。

そんな中、チームがリーグの残留をかけた大切な試合の1週間前、突然の収容所閉鎖が発表され、捕虜たちはドイツへ帰ることになった。

しかし、トラウトマンはチームを助けるためにイギリスに残ることを決める。

トラウトマンの活躍でチームは勝利。その日の夜、トラウトマンとマーガレットは結ばれ互いの愛を確かめ合いました。

トラウトマンは歴史あるビッグクラブ、マンチェスター・シティのトンプソン監督より入団テストを受けるよう勧められた。

トラウマンは見事マンチェスター・シティの入団テストに合格。記者会見が開かれたが、記者からは「軍には志願して入っているね?」「鉄十字勲章を受けたのは本当か?」などの質問を受ける。

翌日の新聞には“戦争責任を言い逃れたナチス兵”という見出しがつけられ、トラウマンに対する風当たりが強くなっていった。

ユダヤ人を中心としたシティのファンは大激怒し、トラウトマン初出場の試合では大ブーイングが起こる。

マーガレットと、彼女の父であり前チームの監督だったジャックは本部に乗り込み、激高する人々の前で「戦争から立ち直ろうとしている者に全員で束になって鞭打つのか?それならあなたたちも加害者だ」と訴えた。

この言葉に胸を撃たれたユダヤ人コミュニティのラビ・アルトマンは新聞に声明を発表しました。「教団としてはシティの指示を継続する」と。

それがきっかけとなり、トラウトマンはシティを応援する人々に絶対的な守護神として信頼されるようになっていった。

トラウマンとマーガレットは男の子を授かり、順風満帆な人生かと思われたのだが…

戦争と個人の責任

小中高校で歴史を学んできた私達大人は「ナチス・ドイツ=悪」と言う感覚があると思う。実際、世界でナチス・ドイツの行った事は「悪」とされているし、日本ではそこまで厳格ではないのの、ヨーロッパ圏ではハーケンクロイツは攻撃の対象となっている。

今回『キーパー ある兵士の奇跡』を観て、私は「戦争と個人の責任」について考えさせられた。

主人公のトラウトマンはナチス・ドイツで兵士として従軍し、イギリスの捕虜になった青年。サッカーのキーパーとしては天才的な能力を持っていて、平和な世の中であればサッカー小僧からプロサッカー選手になっただろう人物だったけれど、当時のドイツでナチスに逆らうだなんて、とんでもない話だった。

トラウトマンは何度も「自分には選べなかった」と言っているけれど、実際に選べなかったのだと思う。

現在、ロシアがウクライナに侵攻してるいけれど、ロシア人兵士の中に「自分はウクライナを侵攻したい」と意思を持ってやっている人達はどれくらいいるのだろう? 多くの兵士は「仕事だからやっている」「やるしかない」って感じでやっているのではないかな…って気がする。

愛と赦しとスポーツマンシップ

トラウマンはイギリスでは「元ナチス兵」として認識されてしまうため、どこに行ってもなかなか受け入れてもらえない。サッカーチームでもそうだし、それ以外の場面でもトラウマンは個人ではなく「元ナチス兵」でしかなかった。

そんなトラウマンが1人の人間として周囲から受け入れられていく過程は本当に素晴らしかった。

トラウマンが好青年だった…ってことあるし、何より彼にはゴールキーパーとしての素晴らしい才能があった。

トラウマンの妻になるマーガレットは彼をチームに必要な強いキーパーとしてではなく「1人の男」として彼を愛したし、チームの仲間達は「一緒にサッカーをする仲間」としてトラウマンを受けて入れていく。

綺麗事だと言われてしまえばそうだけど「赦し」って素晴らしいなぁ…と思った。

「じゃあ、あなたは敵国の兵士だった人間を受け入れられるの?」と聞かれたら「分かりません」としか言えないのだけど。映画はあくまでも創作なのだもの。理想を描いたっていいじゃないの…って話。

逆縁の不幸ほど哀しいことはない

「みんなに受けてもらえなくて大変だったね」って感じで進んでいく訳だけど、実のところ途中からはイケイケゴーゴーでトラウマンは幸せの階段を駆け上っていく。

チームからの信頼は厚く、彼自身も人気選手となる。そして妻のマーガレットとの間には男の子を授かる。トラウマンはFAカップ(日本で言うところのサッカー天皇杯みたいなもの)でチームを2度も優勝へ導く。

……だけどFAカップ2度の優勝からの唐突な悲劇。

トラウマンはFAカップの最終戦で首の骨を骨折する大怪我を負う。そして入院中に、1人息子を交通事故で失ってしまう。

子どもが死んでしまうところからは本当に可哀相で観ていられなかった。世の中に逆縁の不幸ほど哀しいことはない。

不幸のドン底にあったトラウマンを引っ張り上げてくれたのは、妻の献身とかつて収容所でトラウマンに辛くあたっていたイギリス人の兵士だった。その兵士は妻子をドイツ軍の攻撃で亡くしていて、だからこそトラウマンが憎くて仕方がなかったのだ…って設定。

ドイツ人もイギリス人も子を亡くして哀しむ親の気持ちは同じなのだ。逆縁の不幸はホント辛い。

実話ベースだけどドキュメンタリーではない

さて。『キーパー ある兵士の奇跡』はバート・トラウトマンの半生を追った実話ベースの作品ではあるけれど、伝記映画でもなければドキュメンタリーでもない。なのでリアルを求める方には向かない作品だと思う。

トラウマンとマーガレットの出会いの時期は違っているし、作品中では夫婦愛が全面に押し出されているけれど、実際は息子を交通事故で亡くしてから夫婦仲が破綻して2人は離婚しているらしい。

ついでに書くとトラウマンはマーガレットと離婚した後も2回結婚している。

……なので、サッカー選手としてのトラウマンを先に知っている人からすると「はぁぁぁ? 何を聖人みたいに書いてるんだよ?」って思ってしまうかも知れない。

その辺は「この映画はトラウマンをモデルにして創作です」ってところが受け入れられるかどうかで感想が変わってくると思う。

この時期だからこそ……

私の場合、ロシアのウクライナ侵攻と『キーパー ある兵士の奇跡』を観た時期がガッツリ重なってしまったので、色々と考えさせられることが多かった。

  • 戦争と個人の責任
  • 兵士は本当に人を殺したくて戦っているのか?
  • 本当の意味での「赦し」は可能なのか?

……等。考えたところで答えが出る訳ではないのだけれど。

ロシアのウクライナ侵攻が1日でも早く終ることを願う。

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白い木蓮の花の下で
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