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深爪 中山可穂 講談社文庫

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『深爪』は発売時に読んだのだが、久しぶりに再読してみた。

中山可穂の作品では「薄味」の部類で、世間的な評価はイマイチな感じだが、個人的には好きな作品である。

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深爪

翻訳家のなつめは、人妻・吹雪と激しい恋に落ちる。

吹雪の家で逢瀬を重ね、子供の昼寝の間に快楽をむさぼる日々。

女同士の恋、家庭を壊すつもりなどなかったのに、会えば会うほど溺れてゆき、愛するがゆえに傷つけあわずにはいられない。

一方、吹雪の夫・マツキヨは、幼い息子を守るため、そんな妻を受け入れ家庭を再生しようとするが――。

アマゾンより引用

感想

私は「不倫」ってヤツが大嫌いだ。

誰がなんと言おうが、いかに恋が素晴らしいものであろうが、世の中には「やっちゃいけないこと」があると思っているし、ましてや母親が子供を捨てて恋人に走るなんて論外だと思う。

愛せないなら産まなければいいのだ。「お母さんにも事情がある」ってことはよーく分かる。

だが、子供にとって、そんなこたぁ、知ったこっちゃない訳で。三十路も過ぎて「不倫はイケナイと思います」と声高に叫ぶことはないけれど、やっぱり嫌いなものは嫌いなのだ。

なので、どんなにロマンティックな恋物語でも「不倫」が題材だと、醒めてしまうのだけど、困ったことに中山可穂の恋愛小説は、やたらと不倫が多い。

この作品は私が苦手とするパターンが凝縮されていると言っても過言ではない。

「人妻と知りつつ近づく」とか「子供を、ほったらかして恋人との情事に現を抜かす」とか。挙句の果てに「夫のもとに子供を置いて恋人に走る母」ときたもんだ。

もう最悪としか言いようがない。それなのに、好きだと言ってしまうのは「切った爪がおまえを恋しがる 」という一文に、やられてしまった……というところに尽きる。

ぶっちゃけ。中山可穂の作品に出てくる女達(主人公カップル)は、嫌なヤツばかりだ。

「人としてどうよ?」と思わずにはいられない。

心に傷があろうが、繊細な心の持ち主だろうが、そんなことは知ったこっちゃない。だけど読んでしまうのだ。これはもう身体に悪い食べ物の方が美味しいというのと同じレベルだと思う。

この作品でも主人公カップルは好きになれなかった。マツキヨと、ひょんさんには、少し思い入れてしまったけど。

中山可穂は私にとって「大嫌いだけど大好き」と言ってしまう数少ない作家さんで、この作品は「大嫌いだけど大好き」な作品なのだと思う。

切った爪がおまえを恋しがる

この一文に、やられたのだ……悔しくてしょうがない。

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